研究課題
本年度は、癌における転写超保存領域T-UCRの意義を明らかにするため、消化管癌と同様、代表的な癌の一つである膀胱癌におけるUc.63+の意義に関する解析を行った。定量的RT-PCR法による検討ではUc.63+は尿路上皮癌で高発現しており、その発現増加が増殖能を亢進させること、逆に発現低下がアンドロゲン陽性尿路上皮癌細胞株においてシスプラチン感受性を亢進させることを明らかとした。また、胃癌の癌幹細胞マーカー探索のために行ったspheroid colony formationにより同定したclaspinが免疫組織化学的に203例中94例(47%)に発現し、T因子、N 因子、ステージの高い症例や脈管侵襲のある症例ほど高発現すること、独立した予後不良因子であるとともにsiRNAを用いた解析によりその発現が増殖能や浸潤能を制御すること、さらにその発現は既存の癌幹細胞マーカーであるCD44に加えて受容体型チロシンキナーゼであるHER2やp53とも有意な相関関係にあることを明らかとし、胃癌の進展や癌幹細胞を制御する重要な癌関連分子であることを示した。腎細胞癌においてもclaspinは95例中45例(47%)に発現し、T因子、ステージの高い症例や脈管侵襲のある症例、組織学的異型度の高い症例ほど高発現すること、ErkやAktのリン酸化を通じて増殖能を制御すること、CD44、EGFR、p53に加えて免疫チェックポイントに関わるPD-L1とも有意な相関を示し、重要な治療標的分子となりうる可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
現在までに本研究の解析に必要な消化管癌および他臓器の癌を含むヒト悪性腫瘍における組織サンプルを十分収集できており、実際にT-UCRs発現解析データに基づく候補の検証を行っている。本年度解析したUc.63+以外の検討も他臓器由来の癌などで行っており、T-UCRの解析を実際のヒト消化管癌のサンプルを用いてその 意義について検証する作業は、おおむね順調に進展しているものと考えられる。
消化管癌におけるT-UCRの発現と分子機構を解明するため、引き続き本年度と同様の解析を行うとともに、多数の臨床検体を用いた臨床病理学的検討、さらには 関連分子の検討などを行い、治療標的分子、血清腫瘍マーカー、鑑別診断マーカー等の開発につなげる予定である。
令和元年度は主にデータ解析や文献検索等を通じて候補分子の選定を行うことに専念したため、次年度使用額が生じた。次年度以降は、令和元年度に選定した候補分子の臨床病理学的意義を明らかにするため、多数の臨床検体を用いた臨床病理学的検討、さらには 関連分子の検討など、治療標的分子、血清腫瘍マーカー、鑑別診断マーカー等の開発につなげる予定であり、次年度使用額と合わせて研究に必要な試薬や抗体を購入する予定である。
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すべて 雑誌論文 (21件) (うち国際共著 1件、 査読あり 21件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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