研究課題
本年度は、胃癌における分子分類(染色体不安定型、ゲノム安定型、マイクロサテライト不安定型、EBウイルス陽性型)と腫瘍内多様性の関係について検討を行った。浸潤部を構成する組織型の数の多い症例や分化型と未分化型の混在する混合型の症例は臨床的に予後不良であり、癌幹細胞関連分子(CD44, CD133, ALDH1)、受容体型チロシンキナーゼ(c-MET, HER2, EGFR)、細胞外基質作用分子(MMP7, laminin5γ2)を高発現することを明らかにするとともに、腫瘍内多様性の高い分子分類は染色体不安定型、逆に低い分子分類はゲノム安定型であることを示した。抗炎症作用のあるアディポカインの一つであり、正常大腸粘膜に発現しているintelectin-1は大腸癌の59%で発現が低下し、遠隔転移をきたしやすく、予後も不良であることを明らかにした。その生物学的メカニズムとしてEGFR、Erk、Aktのリン酸化が関与することを示した。さらに前癌病変の解析を通じて、通常のadenoma-carcinoma pathwayだけでなく、serrated pathwayを経る発癌機構にも関与していることがわかった。ヒストン修飾に関わる分子の一つであるKDM6Aを欠損させると、膀胱粘膜におけるM2マクロファージの誘導を伴う炎症性変化を活性化させ、p53の機能異常と協調して膀胱癌を発生させることも明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
現在までに本研究の解析に必要な消化管癌および他臓器の癌を含むヒト悪性腫瘍における組織サンプルを十分収集できており、実際にT-UCRs発現解析データに基 づく候補の検証を行っている。T-UCRの解析を実際のヒト消化管癌のサンプルを用いてその意義について検証する作業は、おおむね順調に進展しているものと考えられる。
消化管癌におけるT-UCRの発現と分子機構を解明するため、引き続き本年度と同様の解析を行うとともに、多数の臨床検体を用いた臨床病理学的検討、さらには 関連分子の検討などを行い、治療標的分子、血清腫瘍マーカー、鑑別診断マーカー等の開発につなげる予定である。
2020年度は主にデータ解析や文献検索等を通じて候補分子の選定を行うことに専念したため、次年度使用額が生じた。次年度以降は、これまでに選定した候補分子の臨床病理学的意義を明らかにするため、多数の臨床検体を用いた臨床病理学的検討、さらには関連分子の検討など、治療標的分子、血清腫瘍マーカー、鑑別診断マーカー等の開発につなげる予定であり、次年度使用額と合わせて研究に必要な試薬や抗体を購入する予定である。
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すべて 雑誌論文 (21件) (うち国際共著 2件、 査読あり 20件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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