研究課題/領域番号 |
19K07435
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
北澤 理子 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (00273780)
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研究分担者 |
原口 竜摩 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (00423690)
木谷 彰岐 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (60380234)
福島 万奈 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (70546225) [辞退]
小原 幸弘 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (50792214)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / RANK / RANKL / 遺伝子プロモータ / メチル化 / 加齢 |
研究実績の概要 |
閉経関連骨減少は骨粗鬆症の主因であり、有効な治療薬も使用されているが、今後の超高齢化社会においては男女を問わず「老人性骨粗鬆症」の病態解明が重要である。30歳代骨量の70%まで骨量が減少した高齢個体では、骨吸収の主幹である破骨細胞分化因子RANKLや受容体RANKの発現制御において、CpGメチル化による転写抑制がおこり骨代謝回転を下げて骨減少を抑制するのではないかという作業仮説に基づく研究計画である。 本研究計画において、加齢に関連する破骨細胞分化因子RANKL発現制御を検討するために、RANKL遺伝子転写調節領域の特定部位に1塩基変異を導入した遺伝子改変動物Tnfsf11-GFPマウスの系統確立と飼育を行った。21週令と53週令で大腿骨骨組織のサンプリングと、RANKL, OPG, CTSKの発現レベルを比較検討した。 破骨細胞株RAW264 の培養条件での継代という時間的負荷による受容体RANK発現低下と、転写開始部位周辺のCpGメチル化を明らかにした。培養細胞においてもメチル化陽性細胞の分布は不均一であり、cell block標本を用いて、RANK遺伝子がメチル化された細胞を可視化するための条件設定を検討した。生体内での時間的負荷については、加齢マウス12ヶ月齢と若齢マウス10.5週齢の比較検討を行った。12ヶ月齢ではマクロファージのRANK遺伝子のCpGメチル化が有意に高く、ex vivo培養での破骨細胞形成の低下を認めた。 これらの研究成果は、第109回日本病理学会総会、第38回日本骨代謝学会総会2020、ASBMR 2020 Annual Meeting September 11-15, 2020 Virtual Eventにて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
破骨細胞分化因子RANKL遺伝子の転写調節領域の特定部位に1塩基変異を導入した遺伝子改変動物Tnfsf11-GFPマウスの系統確立と飼育は順調に進行した。遺伝子改変動物の21週令と53週令において、骨量測定と全身組織のサンプリングを行った。GFPノックインマウスでは、RANKL遺伝子の転写調節領域の1塩基変異により、対照群よりも低骨量を示し、RANKL mRNA発現増加, 破骨細胞分化形質CTSKの発現増加を示した。1塩基変異によりメチル化を阻害するとRANKL発現が増加することが示唆された。in vitroではRANKL遺伝子プロモータ領域のTATA-box直上のCpG部位に1塩基変異を導入しても、RANKL転写活性の変化はなかった。Gel shift assayによりTATA-boxでのTBPとの結合性に変化はなく、メチル化の有無とMecP2との競合作用を検討中である。 破骨細胞分化因子受容体RANKの発現制御に対して、破骨細胞株RAW264への継代という時間負荷によるCpGメチル化集積とRANK発現低下についての検討を行った。受容体RANK遺伝子転写開始部位周辺のCpGメチル化をtargetにプローブを設定し、メチル化検出系の条件設定を検討した。In vitroの培養細胞レベルでもメチル化陽性細胞の分布は不均一であり、cell block標本を用いて、再現性良くメチル化を評価するための実験系の基礎検討を行った。 受容体RANK遺伝子発現制御に関わる転写因子ネットワークの解析については、転写因子NFATc1の関与を中心に検討した。阻害剤を用いた検討や、PU.1やMITFとの相乗効果について、検討した。
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今後の研究の推進方策 |
RANKL遺伝子プロモータ領域の特定部位に入れた塩基変異のin vitroでの機能評価を行うとともに、遺伝子改変動物Tnfsf11-GFPマウスの個体レベルでの表現型の解析を行う。前年度のサンプリング結果に基づいて、通常のRANKL発現量ではGFP螢光による可視化よりも、抗GFP抗体での免疫染色による評価が有効であり、全身諸臓器での分布を解析する。個体数をさらに増やして、若齢マウスと高齢マウス個体の骨量測定を行い、骨形態計測による骨組織の解析を行う。 受容体RANKの遺伝子発現制御に関して、引き続き、培養細胞レベルの検討と、転写因子ネットワークの解析として、NFATc1を介するpositive feed back機序について論文投稿予定である。 培養細胞レベルの検討は、「骨細胞ではRANKL遺伝子のpin-point制御が機能するかどうか」について、令和2年度に培養系を確立した骨細胞株への長時間培養によるRANKL遺伝子発現と遺伝子プロモータのメチル化を重点的に行う。 特に、既往のDNAメチル化に対して、MeCP2の発現抑制を行うことにより、メチル化による抑制機構が解除されて、遺伝子の再活性化がおこる可能性について検討する。即ち、加齢により代謝回転が低下した恒常性を保つ一方で、酸化的ストレスや低酸素状態などの病的付加が加わると、CpGメチル化が持続していても、RANKL発現が促進して、病的な骨吸収促進を来す可能性について、検討する。 研究成果をとりまとめ、日本病理学会総会、日本骨代謝学会総会、米国骨代謝学会ASBMRにて報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染流行のため、国内学会、国際学会がWEB開催となった。米国学会出張の旅費支出予定分は、次年度の出張を考慮して繰り越すことにした。動物実験や細胞培養、分子生物学的解析は順調に推移しているが、前年度で準備した試薬などを有効に活用したことで、想定よりも支出が減少した。最終年度では実験補助の謝金や論文校正費用など、さらなる支出が見込まれるので、次年度に繰り越して使用する予定である。
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