研究課題/領域番号 |
19K07436
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
内田 智久 大分大学, 医学部, 講師 (70381035)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | H. pylori / 東南アジア / 胃癌 |
研究実績の概要 |
Helicobacter pylori (ピロリ菌)感染による慢性炎症の持続、特に萎縮性胃炎が胃がん発症に重要な役割を果たしている。アジアの胃がん発症率は国、地域に よって大きな差があり、特に、インドネシア、タイでは胃がん発症率は本邦の1/10以下と非常に低い。本研究では、世界的に胃がんの少ないタイ・インドネシアの胃粘膜に着目し、慢性萎縮性胃炎を詳細に検討することで胃がんにつながる胃粘膜の病態解析を行い胃がん発症が少ない原因を明らかにする。 2023年度は、タイに渡航し現地にて研究者と病理組織検体を検鏡しながらディスカッションし、研究成果をまとめる方向性について議論を行った。さらに、ピロリ菌感染の新規検査法:血清抗体を検査するラテックス凝集濁度 (LA) アッセイについて、アジア人(モンゴル人)集団におけるピロリ菌感染の診断と胃粘膜の変化の予測のための LA アッセイを評価した。その結果として、1.LA アッセイのカットオフ値、感度、特異度の値は、それぞれ 18.35 U/mL、74.2%、および 65.6% であった。2.萎縮性胃炎グループの LA 値は、他のグループよりも統計的に高かった(p<0.0001)。3.萎縮性胃炎群を他の 4 つの群と区別するカットオフ値は 32.0 U/mL、曲線下面積は 0.673 で、E プレート、ペプシノーゲン (PG) I、PG II、PG の中で最も高かった。4.データ内の I/II 比テスト。多重ロジスティック回帰における LA アッセイおよび PG I テストによって測定された萎縮性胃炎のオッズ比はそれぞれ 2.5 および 1.9 であり、他のテストよりも有意に高かった。これらの結果から、LA アッセイは、萎縮性胃炎のリスクを判定できることが明らかとなった。また、萎縮性胃炎は胃がんの重大な危険因子となる事を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アジアのピロリ菌感染解析のため、東南アジアに赴き現地の研究者とのディスカッションを行った。また、アジア(モンゴル)のラテックス凝集濁度 (LA) アッセイは、萎縮性胃炎のリスクを判定できる事を明らかにし、その結果をGut Liver. 2024 Jan 15;18(1):60-69.に発表できた。アジアのピロリ菌感染の特徴が一つ明らかとなり、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
さらに、ピロリ菌病原因子の解析、インドネシア・タイをはじめとしたアジアのピロリ菌の遺伝子の解明を進める。 東南アジアに出向いて現地研究者とのディスカッションを進めて、研究成果をまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
東南アジアでの渡航再開が当初の予定より遅れ、残額が発生した。2024年度の研究計画に従い、適切に研究経費を使用する。
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