研究課題
リンパ腫型や皮膚型などの腫瘤形成を主体とするATLLでは、病理組織学的にT細胞性リンパ腫が同定され、かつサザンブロット(SBH)法によるHTLV-1プロウイルスのモノクローナルな組み込みが確認されることが標準的な確定診断法である。しかし、その施行には大量の新鮮生もしくは凍結検体を要するため、病理診断で汎用されるFFPE検体や少量の生検検体では実施困難である。そこで、本研究はFFPE組織内におけるHTLV-1由来の遺伝子産物HBZに対するRNA in situ hybridization (HBZ-RNAscope)法およびtax遺伝子を標的としたHTLV-1プロウイルス定量(tax-qPCR)法を併用し、SBH法に代替する新規診断アルゴリズムを開発した(Takatori M, et al. Mod Pathol 2021.)。FFPE検体119例(ATLL62例、HTLV-1キャリア41例を含む非ATLL症例57例)を解析し、各症例のSBH法結果と比較することで、その有用性を検討した。結果として、HBZ-RNAscope法は組織内におけるHTLV-1感染細胞の局在とその浸潤範囲を可視化でき、SBH法で確認できたATLL62例中39例(63%)で同定可能であった。特に直近2年未満の検体では、18例中17例(94%)を同定でき、日常診断における有用性が示された。一方、tax-qPCR法は30%以上の腫瘍含有率を示したATLL59例のうち52例(88%)を陽性と判定できた一方で、HTLV-1キャリアを含む非ATLL検体は全例陰性であった。両者を組み合わせた診断アルゴリズムは、本研究対象119例中112例(94%)で解析可能で、感度および特異度ともに100%でATLLを鑑別できた。この診断法によって、ATLLのより正確な診断が期待される。
2: おおむね順調に進展している
研究は順調に推移しており、令和2年度中に第1報の論文を発表した。令和3年度は令和2年度までの研究成果を元に、応用研究をさらに進めていく。
少量検体からのHTLV-1の検出、細胞の生物学的性質の解析についてさらに解析を深めていく。
試薬の購入が令和3年度にずれ込んだことと、学会出張がコロナウイルスの蔓延も重なって想定よりも少なかったため。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Modern Pathology
巻: 34 ページ: 51-58
10.1038/s41379-020-0635-8