研究課題/領域番号 |
19K07445
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
康 徳東 昭和大学, 医学部, 講師 (00571952)
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研究分担者 |
本田 一穂 昭和大学, 医学部, 教授 (10256505)
高木 孝士 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 講師 (10774820)
澤 智華 昭和大学, 医学部, 講師 (80422541)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 質量分析法 / 尿細管間質炎 / 抗刷子縁抗体病 |
研究実績の概要 |
背景:抗刷子縁抗体病は新しく腎疾患概念として提唱され、重篤な腎尿細管障害により急速に腎機能が低下する予後不良の疾患である。血中のMegalinの自己免疫抗体に関与するとされるが、尿細管障害を起こす機序に不明な部分が多い。方法:本研究にはLewis/SsNSlc(Lewis)及びSprague Dawley (SD)の2系統のラットを使用する。SDラット(8匹)より腎近位尿細管刷子縁蛋白(FxA1)抗原を抽出し、5週齢Lewis ラット(n=15)の皮下投与後によりHeymman腎炎を誘導され、未投与のLewisラットを対称群とした(n=5)。10週、16週に採血及び腎臓の摘出を行い、生化学及び病理学的に評価した。結果:10週16週のHeymman腎炎モデルラットには血清Cr値の上昇と尿細管間質炎を認め、蛍光抗体法では免疫近位尿細管基底膜にMegalinやIgGやC3の沈着が見られた。また、質量分析法を用い、近位尿細管細胞にはエンドサイトシスに関与するMegalinとRabタンパク質などの変化が発現された。結論:LMDと質量分析法により近位尿細管細胞から蛋白を抽出し、抗刷子縁抗体病の尿細管間質障害の発症機序及び進行に関連する因子も同定できると考えられ、本疾患の治療標的への可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の研究計画であるHeymman腎炎モデルラットを用い、レーザーマイクロディセクッショウと質量分析法を併用し、近位尿細管の網羅的な検討は十分に遂行した。 使用動物の匹数を計画通りの範囲内で使用し、有意義な関連因子を発現できた。現時点では、質量分析で得られた結果を免疫染色、Westernblot及びELISAなどの実験方法で確かめており、検出された蛋白因子の間の関連性及びエンドサイトシスやトランスサイトシスのPathwayを解明する知見が得られた。以上からのpositive dataを説明・補完する結果を得られており、大きな支障なく研究を推敲できている。
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今後の研究の推進方策 |
質量分析法を用いて抗刷子縁抗体病の尿細管間質障害因子の同定はHeymman腎炎モデルを用いて十分に解明できた。高度の蛋白尿だけではなく、腎機能低下を確認した上で近位尿細管細胞の機能障害の現象にも着目し、エンドサイトシスとトランスサイトシスが尿細管間質障害に及ぼすこと及びその詳細な発症メカニズムを評価する。今後は、Passive Heymann nephritis やアドリアマイシン腎症モデルを追加し、傍尿細管毛細血管から抗体や高度蛋白尿による近位尿細管細胞の影響を加え、起炎因子の再検証を行う。現在、アドリアマイシン腎症モデルでは検証しており、Passive Heymann nephritisの作成と分析に問題はない。種々の検証を実行する上で問題や支障がないと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染が拡大するため、一定期間内に動物の搬入や備品試薬の納品ができず、実験計画よりやや遅れている。また、質量分析は順調であり、分析できるデータは予想より多く得られ、解析時間がかかっている。次年度使用額があり、翌年度の実験やデータ解析用の物品費として利用する。
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