研究実績の概要 |
令和元年度は外科的切除を受けた124例の子宮体癌(116例の類内膜腺癌,4例の明細胞腺癌,4例の漿液性癌),68例の卵巣癌(14例の類内膜腺癌,63例の明細胞腺癌,1例の漿液性癌),10例の内膜症性嚢胞,8例の増殖期子宮内膜のホルマリン固定・パラフィン包埋組織から組織マイクロアレイを作成し,腫瘍,内膜症性嚢胞,および,正常子宮内膜におけるFOXJ1, cystathionineγ-lyase (CTH)の発現細胞の分布と発現様式を検証した.腫瘍細胞における発現の程度は5段階(P0~P4の順に高発現)に半定量的に評価し,正常子宮内膜と内膜症性嚢胞の上皮における発現との比較を行った. 結果としては,(1)内膜症性嚢胞上皮におけるCTHの発現細胞は比較的少数で,正常子宮内膜腺上皮と比較してやや上昇していたものの,両者に有意な差は見られなかった.(2)子宮体癌におけるCTH発現細胞は,類内膜腺癌(n=116)においてはP0: 2, P1: 19, P2: 79, P3: 46, P4: 1,明細胞腺癌(n=4)においてはP0: 0, P1: 0, P2: 0, P3: 1, P4: 3)で,明細胞腺癌は類内膜腺癌と比較してCTHの発現が有意に更新していることが明らかとなった.(3)卵巣癌におけるCTH発現細胞は,類内膜腺癌(n=14)においてはP0: 0, P1: 2, P2: 9, P3: 2, P4: 1,明細胞腺癌(n=63)においてはP0: 0, P1: 0, P2: 0, P3: 1, P4: 62)で,明細胞腺癌は類内膜腺癌と比較してCTHの発現が有意に更新していることが明らかとなり,卵巣明細胞腺癌が酸化的ストレスに耐性を有する上皮より発生するとする仮説を裏付ける結果と考えられた.
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