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2020 年度 実施状況報告書

卵巣明細胞腺癌の発癌および特異的な電子受容体産生を標的とした治療に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K07446
研究機関帝京大学

研究代表者

山崎 一人  帝京大学, 医学部, 教授 (60302519)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード卵巣癌 / 明細胞腺癌 / cystathionineγ-lyase / NRF2 / KEAP1 / フェロトーシス / 抗酸化ストレス
研究実績の概要

令和元年の研究より卵巣明細胞腺癌においてはcystathionine γ-lyase (CTH)とcystathionine β-synthetase (CBS)の発現が亢進していることが明らかとなった.明細胞腺癌におけるCBS, CTHの産生亢進は細胞内における還元型グルタチオンの(GTS)の産生亢進とグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx4)の活性亢進を介して,膜脂質酸化の抑制(フェロトーシス耐性)を促すものと推察された.
この結果をもとに,令和2年度は明細胞腺癌においてCBS, CTHの産生が亢進している機序を解明するため,両者の転写活性を亢進する転写因子NRF2,および,NRF2のネガティブレギュレーターであるKEAP1の発現様態を検討した.具体的には,外科的切除を受けた40例の卵巣明細胞腺癌のホルマリン固定・パラフィン包埋組織を用い,(1)Sanger法によるNRF2遺伝子における活性化変異の検索,(2)Sanger法によるKEAP1遺伝子におけるミスセンス変異の検索,(3)メチル化特異的PCRによるKEAP1遺伝子プロモーター領域におけるメチル化の検索,(4)免疫組織染色におけるKEAP1遺伝子の発現減弱とNRF2の核内移行の関連の検索,を行った.
結果;(1)いずれの症例においてもNRF2遺伝子における活性化変異は見られなかった.(2)40例中9例(22.5%)にKEAP1遺伝子のミスセンス変異が検出された.(3)40例中18例(45.0%)にKEAP1遺伝子プロモーター領域のメチル化が検出され,計27例(67.5%)にKEAP1遺伝子の発現減弱の原因となる異常が検出された.(4)KEAP1遺伝子プロモーター領域のメチル化が検出された症例においてはKEAP1の発現減弱,および,NRF2の核内集積が高率に認められた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

1.既存人体資料を用いた観察研究
研究実績の概要に記載した通り,既存人体組織を用いた観察研究は順調に進捗している.明細胞腺癌におけるCBS, CTH発現亢進のメカニズムにNRF2/KEAP1経路の異常が関与していることは令和2年4月に開催された日本病理学会総会で発表した.
2.培養細胞を用いたCBS, CTH発現抑制に関する実験
当初の計画では令和二年度にsiRNAおよび,CRISPR cas9によるCBS, CTH発現抑制が明細胞腺癌,類内膜腺癌の低酸素応答に及ぼす影響を検索する予定であったが,その前にCBS, CTHの発現亢進のメカニズムを検討する必要があったため,これを優先した.CTHの発現を抑制するsiRNA, CRISPR cas9のシステムは既に入手しており,昨年度に購入した明細胞腺癌,類内膜腺癌の培養細胞への導入を進めている.

今後の研究の推進方策

令和3年度には培養細胞を用いた実験で以下の項目の検証を推進する.
(1) 明細胞腺癌,および,対照となる類内膜腺癌培養細胞に各種酸化ストレスを付与し,類内膜腺癌細胞と比較して明細胞腺癌細胞が酸化ストレスにより耐性であることを検証する.(2) 明細胞腺癌細胞において,CBS, CTHの阻害剤であるAoAA, DLプロパギルグリシンの投与,および,siRNA, CRISPR cas9によるCBS, CTH発現抑制が明細胞腺癌の酸化ストレス耐性を阻害することを検証する.(3) CBS/CTH経路の上流として機能する細胞膜上のシスチントランスポーター(xCT)の阻害剤であるerastin, スルファパラディンを用いて,細胞内へのシスチンの取り込みがCBS, CTHの産生に重要であり,明細胞腺癌細胞の酸化ストレス耐性に寄与することを検証する.(4)CBS/CTH経路の下流で機能するグルタチオン合成酵素の阻害剤であるBSO(DLブチオニルスルホキシミン)を用いて,明細胞腺癌において酸化ストレス耐性に還元型グルタチオンが重要な役割を果たすことを実証する.(5)還元型グルタチオンを基質として膜脂質の酸化を抑制するGPx4の阻害剤であるFIN56, RSL3を用い,明細胞腺癌細胞の酸化的ストレス耐性の獲得にはCBS, CTH,GTS, および,最終的にGPx4の活性亢進が必要であることを実証する.また,(6)この経路の活性化にはCBS, CTHの基質であるアスパラギン酸の存在が不可欠であることを検証する.

次年度使用額が生じた理由

令和二年度に予定していた培養細胞を用いたin vivoの実験を行う前に,明細胞腺癌におけるNRF2/KEAP1経路の検索を行った.このため,予定していた実験の一部が令和三年度にずれ込んだことによる.令和三年度の実験の遂行に支障はない.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] KEAP1 silencing in ovarian clear cell adenocarcinoma2021

    • 著者名/発表者名
      山崎一人,木全淳一郎
    • 学会等名
      日本病理学会総会

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公開日: 2021-12-27  

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