研究課題/領域番号 |
19K07447
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
森 直樹 国際医療福祉大学, 国際医療福祉大学成田病院, 教授 (20241078)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨髄増殖性腫瘍 / JAK2 / 遺伝子変異 |
研究実績の概要 |
JAK2遺伝子は赤血球の分化増殖に働くエリスロポエチンのシグナル伝達に関係するチロシンキナーゼをコードしている。慢性骨髄増殖性腫瘍のうち、真性多血症の95%、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症では50-60%の症例でJAK2遺伝子のV617F変異が報告されている。 骨髄増殖性腫瘍の多くは孤発性で50-60代に発症するが、家族歴も5-10%程度であり若年発症例も認められている。しかし家族性の骨髄増殖性腫瘍でもJAK2 V617F変異の生殖細胞系列変異による伝搬は報告されていない。 モザイクは一人の個体に異なったgenotypeの細胞が存在する状態であり、遺伝性神経鞘腫でNF1遺伝子に、遺伝性網膜芽細胞腫でRB1遺伝子に生殖細胞系列のモザイクがあり、父親または母親の生殖細胞系列モザイクにより子供に腫瘍が発生することが報告されている。 生殖細胞系列モザイクは、受精後分裂し分化する過程のどこで変異がおこるかにより、体細胞モザイクを伴うことが知られている。体細胞モザイクは遺伝性疾患以外に孤発性の疾患でも認められている。 これまでに家族性発症の骨髄増殖性腫瘍で、JAK2 V617F変異が生殖細胞系列変異のモザイクにより受け継がれている場合もあるのか、また孤発性の骨髄増殖性腫瘍でも、JAK2 V617F変異が体細胞モザイクになっている症例があるのかは不明である。 われわれはJAK2 V617F変異陽性の家族性および孤発性の骨髄増殖性腫瘍症例で、次世代シークエンサーを用いたターゲット・シークエンスで遺伝子変異を定量的に解析し、JAK2 V617F変異の割合は血液・骨髄からのDNAで9.6-100%、爪由来のDNAで0-8.1%であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JAK2 V617F変異陽性の家族性および孤発性の骨髄増殖性腫瘍症例13例で、次世代シークエンサーを用いてがん関連遺伝子パネルでターゲット・シークエンスを実施し遺伝子変異を定量的に解析した。 血液・骨髄から抽出したDNAでJAK2遺伝子変異を9.6-100%の割合で認めた。このうち12例で爪由来のDNAを解析し、変異割合は0-8.1%であった。 本年度に東京女子医科大学から国際医療福祉大学成田病院へ異動となったため、前職で予定していたターゲットシークエンスの実施計画を一部前倒しして実施し結果を解析しているが、異動に伴い新規症例での解析は中断している。
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今後の研究の推進方策 |
東京女子医科大学でのターゲットシークエンスの結果を臨床データ、キャピラリーシクエンスと併せて解析し学会、論文発表を計画している。 異動先の国際医療福祉大学成田病院でも、新たに倫理委員会に申請して承認を得る。 新規の対象となる患者から同意を取得後、血液、爪、毛髪などの検体を採取しDNAを抽出して本研究計画の継続を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時は東京女子医科大学で当研究を完遂する予定であったが、本年度に国際医療福祉大学成田病院へ異動となった。異動先での倫理委員会への申請など手続きが必要になり新規症例での解析は中断しているため次年度使用額が生じた。 異動先で次年度に新規症例でターゲットシークエンスを行う。
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