研究課題/領域番号 |
19K07448
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
塩竈 和也 藤田医科大学, 医療科学部, 准教授 (10387699)
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研究分担者 |
塚本 徹哉 藤田医科大学, 医学部, 教授 (00236861)
尾之内 高慶 藤田医科大学, 共同利用研究設備サポートセンター, 講師 (20632954)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 好中球細胞外トラップ / マクロファージ細胞外トラップ / 免疫染色 / ホルマリン固定パラフィン切片 / サバイバル型NETs / 特攻隊型NETs / カルプロテクチン / Necroptosis |
研究実績の概要 |
各種疾患におけるNETsおよびMETsの関与について、免疫染色を用いて病理学的解析を行った。潰瘍性大腸炎およびクローン病では、ほとんどの症例にNETsが関与していることが証明された。一部の症例において、炎症粘膜の一部にMETsマーカーが線維状に陽性を示した。この結果はこれまでと同様に、METsは非常に限定的に生じる細胞死として確認された。炎症性腸疾患の便中バイオマーカーであるカルプロテクチンは、NETsおよびMETs陽性部位にいずれも明瞭な陽性シグナルを示し、NETsおよびMETsを検出できる汎ETosisマーカーとして推奨された。 低化胞巣周囲、癌組織と正常組織の境界部において、好中球浸潤は認められるもののNETsは確認されなかった。癌先進部では、浸潤した好中球の一部がNETsを形成しており、サバイバル型NETsが大半を占めた。壊死部では、citH3およびMPOが陽性を示し、特攻隊型NETsが確認された。 Necroptosisは新しいプロブラム細胞死の概念であり、各種炎症性疾患の9/11例はnecroptosisおよびNETsとも高い陽性率(20~35%)を示した。7/11例はnecroptosisよりNETsが高い陽性率を示し、NETsのみの発現が認められた症例が2/11例あった。今回の検討によって、necroptosisが引き金となってNETsを誘導している可能性が高いことを見出した。症例間でnecroptosisおよびNETsの陽性率にばらつきが生じたため、necroptosisを介さずに自発的に細胞死を引き起こしたのか、あるいはnecroptosisマーカーの活性が弱まったことによってFFPE切片上では検出できなかった可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍による影響で研究以外の業務が積み重なってしまった。さらに、大学内における組織編成が行われたことも要因の一つであり、当初の計画よりも実験に取り組む時間が確保できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
われわれが導き出した組織化学的データと臨床データを照らし合わせて網羅解析を実行する。大腸癌症例については、原発と転移部位での関係性を明らかにする。さらに、ステージ別に症例を選出し、NETsの有無と臨床データと比較する。特攻隊型NETsは網目状に分布しているため、Z-stuckによる三次元解析を追加する。腫瘍関連好中球(TAN)に着目し、浸潤好中球を腫瘍抑制型のN1型、腫瘍促進型のN2型に分類して、NETsとともにTANの相互関係を明らかにする。さらに、炎症に大きく関わるLow density neutrophilも視野に入れて網羅解析を行う。Necroptosisに関しては、pyroptosisおよびapoptosisを統合した概念であるPANoptosisを主軸としてプロブラム細胞死とNETsの相互関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による研究以外の業務増加、大学内における組織編成が行われたことが重なり、当初の計画よりも実験に取り組む時間が確保できなかった。研究費の多くは免疫染色用試薬、当大学内の機器利用料、論文投稿費にあてる。
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