研究課題/領域番号 |
19K07449
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
笠井 謙次 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70242857)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乳癌 / トリプルネガティブ乳癌 / FAM64A / DNA修復機構 |
研究実績の概要 |
本研究では約47%のトリプルネガティブ乳癌(TNBC)に発現している核蛋白FAM64Aとその結合蛋白から見た、TNBCの細胞増殖特性と新規治療戦略のための基盤的知見を得ることを目的としている。研究計画書に従い、2019年度は①乳癌手術材の免疫染色と臨床情報を合わせた統計解析 ②培養細胞でのFAM64A及び結合蛋白のproximity ligation assay解析、発現ベクター作成 を進めた。 その結果、①当初予定していた免疫染色は終了し現在臨床情報の統計解析を進めている。これまでにFAM64A陽性TNBCは陰性TNBCよりもKi67 indexが高い傾向にあるが有意とは言い難いことを見出している。一方培養細胞での実験から細胞周期及びDNA複製機構との関係が示唆されたため、cyclinAやGemininなど細胞周期マーカーやTP53発現との関係性を追加検討している。②細胞質蛋白のPLA法は実施可能であったが、核内蛋白では陽性コントロールの検出が困難であった。細胞固定法や核内へのプローブ移行性を担保する膜処理などPLAの前処理での工夫が必要だと考え、現在条件設定を進めている。またレンチウイルスベクターを作成し、FAM64A野生型、sumo化蛋白結合部位を欠く変異体などを安定発現する乳癌細胞株を樹立した。そこにsiRNAを導入し、内在性FAM64A消失によるDNA損傷反応を回避できるかを検証した。しかし当初使用し効果の有ったsiRNAは翻訳領域相補的であったのに対し、今回は3’非翻訳領域でデザインせざるを得なかったため内在性FAM64A減少が不十分であった。今後siRNAを設計し直し再検討する予定である。また本研究から派生して、各種癌に過剰発現し細胞増殖・細胞分裂に必須な蛋白STILがTNBCや膵臓癌の細胞運動に関わることを見出したので、その成果を癌専門誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた免疫染色は概ね終了したが、cyclinAやGemininあるいはTP53などを追加検討する必要性が出てきた。 また細胞質蛋白に対するPLA法は実施可能であったが、核内陽性コントロールに対するPLA法が検出できなかったため、現在実験条件の再検討を要している。 FAM64A野生型、sumo化蛋白結合部位を欠く変異体などのレンチウイルスベクターを作成し、安定発現する乳癌細胞株を樹立したが、新規作成したsiRNAの効力が弱かったため、siRNAを設計し直し再検討する必要性がある。
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今後の研究の推進方策 |
免疫染色を用いた臨床病理的解析について、症例収集は概ね完了しているので、適宜免疫染色を追加し、臨床情報を含めた統計解析を進める。 培養細胞を用いた解析では、PLA法の改善と新規siRNAを用いた再実験を行う。レンチウイルス感染乳癌細胞株を樹立したので、今後はこれら培養細胞をUV刺激下あるいは薬剤によるDNA複製ストレス下に置き、これら条件下で内在性FAM64Aが如何に変化するか、FAM64Aの過剰発現がこれら環境下でのDNA修復や複製、細胞増殖にどの様な影響を与えるかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用予定の免疫染色用抗体を正式購入する前に入手した見本で条件設定を行っていたため、年度内購入が出来なかった。また動物血清はロットチェックなどを行っていたため、年度内購入が出来なかった。これらは2020年度購入予定である。
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