研究課題
本研究では約47%のトリプルネガティブ乳癌(TNBC)に発現している核蛋白FAM64Aとその結合蛋白から見た、TNBCの細胞増殖特性と新規治療戦略のための基盤的知見を得ることを目的としている。これまでの各種細胞周期マーカーを指標にした解析から、FAM64Aは細胞周期の進行状態を反映していると考えられた。特にcyclin AやGemininとの比較から、FAM64A発現量はG2/M期に増加していると考えた。しかしFAM64A陽性TNBCが陰性TNBCに比し有意にKi-67 indexが高い訳ではないので、FAM64Aは細胞周期進行に必修な基本的因子ではなく、何等かの特異的作用を有するものと考えられる。HEK293T細胞にHaloTag標識FAM64AまたはコントロールHaloTagを強制発現させた核分画から、HaloTagリガンドビーズを用いて結合蛋白を回収した。SDSPAGEで泳動後、CBB染色でHaloTag-FAM64Aのみに観察されたバンドを切り出し、質量分析した結果、SWI/SNF因子やDNA polymeraseなどが同定された。これらの一部について、Tag付発現ベクターを作成し、同じくHEK293TでFAM64Aと強制発現させ免疫沈降を試みているが、現在までに明らかなFAM64A結合蛋白として確定し得るものは同定できていない。またこれら候補蛋白の特異抗体を入手し、TNBC培養細胞の内在性FAM64A蛋白との二重染色を行うと、シグナルの一部は共局在を呈した。以上から、FAM64Aあるいは結合候補蛋白は、sumo化・ubiquitin化など何等かの翻訳後修飾依存性に一過性の結合を起こす可能性を否定できなかった。また上記過程からubiquitin化活性化因子に関する知見をまとめ、別途学術誌に報告した。
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EMBO reports
巻: 23 ページ: e51182
10.15252/embr.202051182