研究課題/領域番号 |
19K07451
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
鍋島 一樹 福岡大学, 医学部, 教授 (40189189)
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研究分担者 |
濱崎 慎 福岡大学, 医学部, 准教授 (90412600)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | mesothelioma / FISH / NF2 / CDKN2A/p16 / BAP1 / cytology |
研究実績の概要 |
本年度はfluorescence in situ hybridization (FISH)施行可能な施設における診断感度向上を目指して、胸膜中皮腫(MPM)と反応性中皮過形成(RMH)の鑑別において、特異度は100%に保ちながら診断感度を上げる目的で、NF2 FISHの応用に取り組んだ。 細胞診への応用を最終目標としながら、まずは組織標本においてNF2 FISH法の応用が有用かを検討した。MPM 47例、RMH 27例を用いて、NF2 FISH単独あるいは既に有用な診断アッセイとして確立された9p21 FISH、MTAP 免疫染色(IHC)、BAP1 IHCとの併用が有用であるかを検討した。中皮腫においてはNF2のホモ欠失は1例も見られず、ヘミ欠失が特徴的で25/47例(感度53.2%)に認められ、RMH症例では全く認められなかった(特異度100%)。MPM群では9p21ホモ欠失は37/47例(78.7%)に、BAP1欠失は27/47例(57.4%)に、MTAP欠失は33/47(70.2%)に認められ、RMH群では何れも認められなかった(特異度100%)。MPM vs RMHの鑑別における診断感度は、9p21 FISHとBAP1 IHCの併用で93.6%であったが、9p21 FISH、BAP1 IHCにNF2 FISHを組み合わせることによってこの47例のコホートにおいては感度100%に達した。 上記のごとく、MPM vs RMHの鑑別において、NF2 FISHの応用は、特にこれまでの9p21 FISH, BAP1 IHCとの併用によって、今後症例数が増えたとしても、診断感度を100%近くにまで上げることができると考えられた。尚、NF2ヘミ欠失と生存期間との関連は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NF2 FISHの組織標本でのMPM vs RMH鑑別における有用性は確認されたので、現在、細胞診への応用に取り組んでいる。細胞診では、スメア標本およびセルブロックのいずれにおいても技術的に応用可能であることは確認済みであるが、既に多くの施設で、免疫組織化学(IHC)の応用のために(中皮細胞起源の確認のためにIHCは必須である)セルブロック作製がルーチン化して行われているので、セルブロックを対象として検討を進めており、現時点では組織標本とほぼ同様のよい結果が得られている。 NF2免疫染色に関してはすでに市販の抗体3種類を用いて検討し、最も染色結果の良い1つを選定した。現在、中皮腫および反応性中皮過形成症例の組織切片での染色を施行中である。
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今後の研究の推進方策 |
上記の細胞診症例(セルブロック)について、少なくともMPM 50症例以上、RMCも20症例まで増やして、NF2 FISHの有用性について、9p21 FISH, BAP1 IHC, MTAP IHCとの併用を含めて検討する予定である。 FISHの施行不能な施設を対象としたMPM vs RMH/RMC鑑別感度向上のために、NF2 IHCが応用可能かを検討する。 IHCはいずれの施設でも施行可能な手技ではあるが、その評価においてはpitfallも多く存在する。実際にBAP1 IHC, MTAP IHCの評価においてどのような問題がどのくらいの頻度で生じるか、またその場合の評価はどうすべきか、ということに関して検討し、明らかにすることによって、諸施設での日常診療に貢献したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
FISHにおいて最も高価なのはハイブリダイゼーションのためのプローブである。プロトコールの改良に取り組んだ結果、市販企業推奨の標本1枚当たりのプローブ量を減らすことが可能となった。その為に、プローブの想定使用量を下回り、若干の余裕が生じた。今年度(2020年度)はさらに多くの細胞診症例にてFISHを施行する予定であるが、当初予算額は初年度に比べて半減するので、その補充にあてる予定である。
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