研究実績の概要 |
近年、Kruppel-like factor (KLF) ファミリーの細胞老化への関与が指摘されてきた。本研究でははじめに、データベース解析によりKLFファミリー(KLF1~KLF17)の子宮内膜癌と正常内膜との遺伝子発現の比較を行った。その結果、KLF2, 4, 6, 7, 8, 9, 11, 15の発現が内膜癌より正常内膜で有意に高く、KLF5のみが正常よりも癌で有意に高かった。子宮内膜癌組織におけるKLF5の免疫組織化学による発現解析では、子宮内膜癌組織中のコルチゾールやエストロゲン濃度とKLF5発現との関連は認められなかったが、アンドロゲン(テストステロン、ジヒドロテストステロン)との有意な正相関を認めた。さらに免疫組織化学にて評価したアンドロゲン受容体陽性群において有意にKLF5の発現が高かった。子宮内膜癌培養細胞IshikawaおよびMFE-296にジヒドロテストステロを添加することによって、KLF5のタンパクおよびmRNAレベルでの有意な増加を認めた。IshikawaおよびMFE-296にKFF5阻害剤(CID-591923およびML-263)を添加することで細胞増殖の抑制が認められた。また、子宮内膜癌培養細胞Ishikawaを用いた三次元培養モデルでの解析を行った。高分化型腺癌由来であるIshikawaは三次元培養によって、管腔様構造を形成した。KLF5阻害剤(ML-263)の添加によって、Ishikawaの管腔形成が低下し、E-cadherinのタンパクレベルでの低下が認められた。現在、KLF5と細胞老化マーカーとの関連を検討中である。さらに癌で低下する他のKLFファミリーの発現と老化との関連を検討する。
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