本研究ではコルチゾールが癌細胞の細胞老化に関わることを明らかにした。これまでの癌とストレス研究と本研究が異なる点は、本研究ではヒト組織標本を用いて実際の腫瘍局所でのコルチゾールを評価していることであり、学術的に新しい観点である。また、癌細胞の細胞老化に加え、Tリンパ球にも着目し、疲弊Tリンパ球とコルチゾールとの関連を明らかにした。多くの癌で免疫療法の効果が認められているが、Tリンパ球の疲弊とPD-1の発現との関連も報告されており、今回の成果から、癌免疫療法と抗コルチゾール、さらには抗ホルモン療法という新たな治療戦略を提唱できるのではと考えている。
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