研究実績の概要 |
OCIAD2は浸潤性肺腺癌において過剰発現している遺伝子であり、正常肺では発現がないため 非常に腫瘍特異性が高い。高発現群は低発現群に比べて有意に予後不良であり、肺腺癌の悪性化において何らかの機能を持つことが示唆される。本研究ではOCIAD2のミトコンドリアにおける機能に焦点を絞り、OCIAD2を発現抑制した肺腺癌細胞を用いて増殖やアポトーシスに与える影響をin vitroで解析する。 本研究課題により、OCIAD2はミトコンドリア膜に局在することが確認され、OCIAD2をノックダウンすることにより1細胞当たりのミトコンドリア数、1ミトコンドリア当たりのクリステ数が顕著に減少し、OCIAD2はミトコンドリアの形態維持や機能に何かしらの働きを持っていると考えられた。次に、OCIAD2をノックダウンした肺腺癌細胞でアポトーシスを検出すべく、caspase等の活性測定やAnenxin Vをマーカーとした細胞膜構造変化解析、チクロトームcの発現・局在解析を行った。その結果、OCIAD2ノックダウンによりチトクロームcの放出やcaspase-3,9, PARPの開裂が見られ、アポトーシスが誘導されていることが明らかになった。さらに、ミトコンドリア膜電位がOCIAD2ノックダウンにより低下することもわかり、OCIAD2が膜電位の維持に寄与している可能性が示唆された。 OCIAD2をノックダウンした3種の細胞を用いたRNA-seqを実施し、OCIAD2がpro-apoptotic initiator, cell cycle, ER stressなどに係る遺伝子を制御している可能性が示され、今後はOCIAD2がアポトーシス抑制という機能を果たすためにkeyとなる因子の同定を目指す。
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