研究課題
現在膵癌は本邦癌死因の上位を占め、5年生存率も5%以下であり、代表的な予後不良悪性腫瘍の一つである。その原因としては早期発見が臨床的に困難であり、術後も膵周囲組織への浸潤により再発し易いこと、術後の遠隔転移が出現し易く、膵内限局性の小病変においても、すでに転移を認める症例も存在すること等が挙げられる。しかし、これら進行性膵癌を見極める有用な腫瘍マーカーはほとんど同定されていないのが現状である。膵癌術前診断としては超音波内視鏡下穿刺吸引法(Endoscopic UltraSound-guided Fine Needle Aspiration:EUS-FNA)による材料を用いた細胞組織学的検討が行われてきたが、昨今EUS-FNAにおいて機器及び手技等の改良改革が進み、近年特にその穿刺針改良が施され、得られる検体も組織学的検討に適した質・量を満たす生検材料となり、現在これら材料をもちいた膵癌における術前診断への実用化が検討されつつある。そこで手術適応にある膵癌患者(stage 0, IA, IB, IIA, IIB, III )のEUS-FNAによる生検材料を用いて、我々が今まで膵癌関連遺伝子産物として同定した癌細胞運動・浸潤に関与するRNA結合蛋白の発現を分子生物学的に検討し、その結果を基に膵癌組織における発現及び各蛋白発現の組み合わせパターンを疫組織化学的検討を行い、浸潤進達度・遠隔転移等の臨床病理学的諸因子との関連や、多変量解析による予後評価を行うことができた(Taniuchi K et al. PLoS One, 17(3), e0265172, 2022)。これら生検及び手術材料から得られた免疫組織化学的検討結果を比較することで、両者の高一致率を確認し、術前生検による癌関連蛋白発現結果をもちいた評価及び組織診断に基づき、術前及び術直後からの化学・放射線療法の選択適応性の有無を評価確立することで、膵癌術後治療方針決定にも応用可能な生検材料による病理診断の可能性を示唆することが出来た。
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