研究課題/領域番号 |
19K07467
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
東 守洋 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (00323395)
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研究分担者 |
田丸 淳一 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (30188429)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 悪性リンパ腫 / 細胞内脂質代謝 / lipid droplet |
研究実績の概要 |
がん細胞は、細胞内の代謝システムを自らの生存、増殖に有利なように改変している。 血液のがんのひとつである悪性リンパ腫には脂肪滴を有するものがある。しかし悪性リンパ腫においては脂質代謝関連分子の役割は不明である。細胞内脂肪滴を有する悪性リンパ腫はより悪性度が高いのか検討し、この脂肪滴や細胞内の脂質の代謝との関連を検討する。とくにLDL受容体の一つであるLR11を中心に研究を行う。本研究により悪性リンパ腫における脂質代謝経路を明らかにし、具体的な治療ターゲットを絞り込める可能性があると考える。さらに形態的な診断から脂質関連分子をターゲットした治療の対象患者を絞り込める可能性についても検討する。脂質代謝経路分子が悪性リンパ腫細胞の悪性度や細胞増殖、細胞死に与える影響について明らかにすることを目的とし、とくにLDLレセプターの一つであるLR11分子の悪性リンパ腫の脂質代謝に与える影響に焦点をあて、1.各種亜型別の細胞内空胞の有無、程度と臨床病理学的事項との比較、2.細胞質内空胞の有無とLR11発現の有無の関連、3.遊離型コレステロールによる細胞死に与えるLR11の影響、4.LR11が脂質代謝関連分子の発現に与える影響、5.LR11の発現と細胞質内空胞の多寡および脂質関連分子の発現の関連について検討する。 本研究では悪性リンパ腫の脂質代謝経路を明らかにするのみならず、具体的な治療ターゲットを絞り込める可能性があると考える。さらに「細胞診による細胞質内空胞の有無」という古典的な形態観察から、脂質関連分子をターゲットした治療の対象患者を絞りこめる可能性もある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 悪性リンパ腫535例についてデータベースを作成した。データベースには症例属性のほか、年齢、性別、ステージ、LDH, sIL-2R等血液検査、予後、組織亜型、細胞表面抗原の発現、遺伝子異常(FISH等)等が含まれる。このデータベースに従い、捺印細胞診検体における細胞内空胞の有無を判定した。 2) 細胞質内空胞と標本作成時のアーチファクトの識別が困難な症例が見られることが判明したため、lipid dropletのマーカーであるPLIN1, PLIN2, PLIN3について免疫組織化学を行うべく、予備実験として培養細胞におけるこれら分子の発現とlipid dropletの相関をlipid染色と比較することにより検討した。 3) LR11発現の有無について、ホルマリン固定パラフィン包埋標本からtissue microarrayを作成し免疫組織化学で検討した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、 1) LR11が遊離型コレステロールによる細胞死に与えるか?LR11の発現や細胞内空胞の有無がいかなる機能を有するかを明らかにするためにLR11ノックダウン細胞にLDLを負荷し細胞死が誘導されるかどうかをAnnexin V/PIを用いたフローサイトメトリーで検討する。 2) LR11が脂質代謝関連分子の発現に影響をあたえうるか?コレステロール代謝経路のうち、取り込み、アセチル化、排出のそれぞれを阻害した悪性リンパ腫細胞株における脂質代謝関連分子の発現をRNA-seqにより検討する。 3) この検討から得られた変化遺伝子群についてヒートマップによる発現比較、主成分解析を行うとともに、得られた変動遺伝子群をhome madeのprobe setとして作成し、LR11ノックダウン細胞のGSEA解析を行う。これによりLR11ノックダウン細胞を用いてLR11がLDL取り込み、アセチル化、排出のいずれに関わっているかを分子発現の変化から検討する。また症例においても年齢、性別、ステージをマッチングさせた16例のDLBCLを用いてRNA-seqを行い実際に変化があるか検討する 4) 実際の症例でLR11の発現と脂質関連分子の発現の関連があるか?4.までに得られた分子群に関してLR11の発現、細胞内空胞の有無によって 分子発現に差があるかどうかを免疫組織化学により検討し、悪性リンパ腫の悪性化に関わる脂質代謝関連分を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
RNA-seq等の網羅的解析について、一部症例を当該年度に行う予定であったが、解析症例を一括で解析したほうが、コストがかからないことが判明したため、次年度に行うこととした。
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