がん細胞は代謝システムを自らの生存に有利なように改変している。悪性リンパ腫においては、脂質代謝関連分子の役割は不明な点が多い。リンパ腫には脂肪滴を有するものがあり、一部のリンパ腫においては古典的には細胞診時のメルクマールとされている。これまでにLDL受容体の一つであるLR11が血清中に多いびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)は予後不良であることを見いだしている。そこで、LR11発現と細胞内脂肪滴との関連、さらにLR11が予後に影響を与えうる機能についてin vitroで検討した。 まず、細胞内LR11の発現はむしろ予後良好な症例に多くみられた。脂肪滴が多いDLBCLは予後不良であった。細胞内脂肪滴のマーカーであるPLN1高発現DLBCLにおいても予後不良であった。細胞内脂肪滴は細胞外部から取り込まれた LDH が、細胞内において利用あるいは排出されなかったものが貯留することにより形成されると考えられている。LR 11をノックダウンすると LDL 負荷により脂肪滴が蓄積していた。このため、LR11はDLBCLの腫瘍胞内においてLDLの排出もしくは輸送に関わっていると考え、LR11の細胞内局在を蛍光顕微鏡を用いて検討した。LR11は細胞膜のLipid raftに存在し、CD20、補体と共局在していた。さらにLR11をノックダウンした細胞では、rituximabによる補体依存性細胞傷害が亢進していた。以上のことから、LR11は1) 細胞内のLDLをlipid raftに輸送すること、2)LR11の存在下でrituximabの補体依存性細胞傷害を抑制する可能性が考えられた。
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