研究課題
[背景]新しく開発された血管内皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(VEGFR-TKI)であるカボザンチニブは、進行性腎細胞癌患者の治療に有効であることが知られている。しかし、なぜカボザンチニブが他の薬剤と比較して腎細胞癌患者により有効であるかを説明できる分子メカニズムは完全には解明されていない。[方法]カボザンチニブはVEGFRに加えてGAS6, AXLおよびc-METも阻害するため、原発性淡明細胞型腎細胞癌110症例および代表的なVEGFR-TKIであるスニチニブ治療後の淡明細胞型腎細胞癌8例を対象にこれらの分子発現を免疫組織学的に検討した。[結果]AXL/GAS6スコアは淡明細胞型腎細胞癌の有意な予後予測因子であることが判明した。また、AXL発現レベルは病期(pT)と相関し、c-MET発現レベルは遠隔転移(pM)、組織学的異型度および全生存率と相関していた。さらにc-MET発現レベルは腫瘍組織内に浸潤している免疫細胞におけるprogrammed cell death-ligand 1(PD-L1)発現と正の相関を示した。ゲノム突然変異分析とメチル化アレイ解析によりAXL/GAS6スコアが腫瘍の免疫抑制環境に関連していることも明らかとなった。さらにスニチニブ治療後の淡明細胞型腎細胞癌は未治療症例に比べ、AXLおよびc-MET発現が増加していた。[考察]これらの結果から、AXL, GAS6およびc-MET発現が淡明細胞型腎細胞癌の進行とスニチニブへの治療耐性に重要な役割を果たしていることが示唆された。特にc-METは腫瘍組織内の免疫細胞におけるPD-L1発現を誘導することにより免疫微小環境を抑制している可能性が高い。即ち、これらの分子経路がカボザンチニブに対する治療効果に関連していると考えられる。
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