研究課題/領域番号 |
19K07469
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
林 大久生 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70569128)
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研究分担者 |
高持 一矢 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (30397369)
細川 正人 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (60722981)
末原 義之 順天堂大学, 医学部, 客員教授 (70509405)
齋藤 剛 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80439736)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | PD-L1 / 肺癌 / 免疫療法 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
現在抗PD-L1抗体による免疫染色が免疫チェックポイント阻害剤のコンパニオン診断薬として利用されているが、PD-1抗体治療効果新規バイオマーカーの同定は肺腺癌の治療において、科学、倫理、規制面の全てにおいてより適切な個別化医療を実現すると期待される。 これまで、PD-1抗体治療による影響で、病理組織学的にがん組織が形態変化 (即ち、がんが進化)した肺癌組織に対して、ホルマリン固定パラフィン包埋組織標本を高解像度にデジタル化(BZ-X800 KEYENCE)、組織内空間的位置情報・細胞形態情報(病理学的annotation)をデータ化した上で、病変内ならびに病変周囲非腫瘍部の複数箇所の微量細胞集団(直径100μm)を分割することなく、網羅的トランスクリプトーム解析を施行することに成功、がん微小環境を反映した遺伝子発現パターンを抽出する事に成功している。 本年度までpathological complete response (pCR)症例を含む4例のシーケンスが完了しているが、特に、免疫療法は癌以外に宿主(患者)側の因子が治療奏功性に影響を及ぼしている事が明らかとなりつつある為、腫瘍近傍の非腫瘍組織でどのような反応が起こっているかを解明する為、がん近傍の非腫瘍部の解析を施行した。 今後はpCR症例で特徴的な非腫瘍部での遺伝子発現パターンを抽出し、治療奏功性と関連した因子の同定を行う。前年度までに得られている癌組織内での発現解析データから得られた治療抵抗生マーカー候補と合わせて、治療予測新規バイオマーカー候補が絞り込みを行う方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き、順天堂大学医学部附属順天堂医院で手術された症例で、術前にPD-1抗体治療を行った肺癌手術検体ホルマリン固定パラフィン包埋 (FFPE)サンプルを用いて多領域シークエンスを行い、がん細胞及びがん微小環境を含む直径100μm程度の組織がどのような遺伝子異常・遺伝子発現を示しているかを包括的に解析した。本年度はpathological complete response (pCR)症例を含む4例の解析を行ったが、特に、免疫療法は癌以外に宿主(患者)側の因子が治療奏功性に影響を及ぼしている事が明らかとなりつつある為、腫瘍近傍の非腫瘍組織でどのような反応が起こっているかを解明する為、非腫瘍部の解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
pCR症例で特徴的な遺伝子発現パターンを抽出し、治療奏功性と関連した因子同定を行う。前年度で得られたがん組織内での発現解析データから得られた治療抵抗生マーカー候補と合わせて、治療予測新規バイオマーカー候補が絞り込みを行う方針である。候補バイオマーカーに関しては、in vitro, in vivoで機能解析を行うとともに、臨床サンプルを用いて、臨床病理学的素因とともにバイオマーカーとしての有用性を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、がん進化の観点から免疫療法治療抵抗性を示す分子機構の解明を目的とし、解析を行ったが、発現解析結果の解釈から、新規バイオマーカー候補の絞り込みに難渋した。その打開策として、免疫療法は癌以外に宿主(患者)側の因子が治療奏功性に影響を及ぼしている事が明らかとなりつつある為、腫瘍近傍の非腫瘍組織でどのような反応が起こっているかを解明する為、非腫瘍部の解析を行った。しかしながら、コロナ感染拡大により、共同研究先と潤滑な研究推進ができなかった事から、非腫瘍部の解析に時間を要した為、研究計画の一部が本年度中に終了しなかった。 次年度は完全奏功例の非腫瘍部で特徴的な遺伝子発現パターンを抽出し、治療奏功性と関連した因子同定を行い、前年度で得られたがん組織内での発現解析データから得られた治療抵抗生マーカー候補と合わせて、治療予測新規バイオマーカー候補が絞り込みを行う方針である。これらの実験に翌年度分として請求した助成金と合わせて使用する。
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