研究課題
膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumor: PanNET)では、抗腫瘍薬としてsomatostatin analogue(SA)やmTOR阻害剤が主に使用される。しかしながら、十分な治療効果が得られない症例も少なくない。そこで、本研究ではSAやmTOR阻害剤の抗腫瘍効果を制御するmiRNAを明らかにすることを計画した。2019年度はSAの作用機序に関わるSSTR2とmiRNA発現の関連について網羅的解析を行った。その結果、SSTR2A陰性PanNETでは3個のmiRNAが発現増強し、そのうち2個がSSTR2を標的とすることが予測された。2020年度は、その2個のmiRNAうち1個について、PanNET切除検体を用いmiRNAとSSTR2の発現について検討を行ったが、miRNAとSSTR2の発現に統計学的な相関関係は認められなかった。そこでmTOR阻害剤の薬理作用に関わるAKT1と既知のmiRNAであるmiR-185-5pの発現についてPanNETの切除組織検体を用いて検討を行った。その結果、AKT1とmiR-185-5pの発現に負の相関傾向が認められた。2021年度は、PanNET細胞株QGP1にmiR-185-5pのmimicを導入し、AKT1の発現、細胞増殖能、mTOR阻害剤添加時の細胞増殖能の変化について検討した。その結果、mimic導入細胞ではAKT1の発現が減弱し、また細胞増殖率が高かった。mTOR阻害剤を添加した検討では、mimic導入細胞ではコントロール細胞に比較し細胞増殖抑制効果が高かった。この結果からは、miR-185-5pはAKT1の発現抑制と細胞増殖能亢進に関与する一方、mTOR阻害剤添加時にはその抗腫瘍効果を増強することが示唆された。2022年度は、PanNET切除検体におけるAKT1およびmiR-185-5pの発現と臨床病理学的因子との関連について検討を行った。miR-185-5pの高発現は、modified ENET stage II-IVのPanNETと有意に関連していた。一方、AKT1の低発現は、非機能性PanNET、Ki67陽性率3%以上およびWHO grade 2-3のPanNETと有意に関連していた。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Scientific Reports
巻: 12 ページ: -
10.1038/s41598-022-22950-2