研究課題/領域番号 |
19K07471
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
伊東 正博 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター), 臨床検査科, 病理医 (30184691)
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研究分担者 |
サエンコ ウラジミール 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 准教授 (30343346)
中島 正洋 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (50284683)
三浦 史郎 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター), 病理診断科, がん中央診療部長・がんゲノム診療部長 (80513316)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放射線被曝 / 甲状腺癌 / 小児 / 遺伝子変異 |
研究実績の概要 |
申請者らはチェルノブイリ原発事故以来,現地での医療支援活動、国際的な組織バンク事業の運営や学術的な研究成果の発信を継続し,2011年の福島第一原発事故後はスクリーニングで発見された若年者甲状腺癌の病理組織・分子生物学的研究に携わっている。 申請課題の研究目的はチェルノブイリ周辺地域と本邦の自然発症と被曝関連の若年発症甲状腺癌,4群の分子病理学的に比較検討を行うことにある。チェルノブイリ小児症例はウクライナ症例を中心に年齢別、組織型別甲状腺がんの遺伝子異常・再配列のプロファイルを明らかにし,放射線誘発甲状腺がんの特徴を継続的に解析している。本邦症例は放射線関連として福島スクリーニング症例,対照の自然発症症例は甲状腺専門病院症例を用いて解析している。 これまでの研究で「放射線関連甲状腺癌には一つの決まった形態的特徴はなく,被曝形式により形態学的にも分子生物学的にも多様な形態を呈する」ことをチェルノブイリ小児甲状腺癌の解析から提案した(Thyroid 2008, Br J Cancer, 2004)。この考え方は福島症例の解析からも云えることを確認した。福島県の若年者スクリーニングで発見された乳頭癌症例の病理形態学的特徴や遺伝子プロファイルは、チェルノブイリ症例とは大きく異なっていた(Cancer Sci 2019, Sci Rep 2015)。チェルノブイリ症例では充実性成分が多くret/PTC変異を主とし,福島症例では乳頭上構造を主とする古典的乳頭癌が多くBRAF点突然変異を主としていた。本邦の自然発症症例と福島症例の形態学的解析は独立した論文として完成させ(Endocr J 2017, Cancer Sci 2019)。本年度はチェルノブイリ周辺地域と本邦の自然発症と原発事故関連の若年発症甲状腺癌,4群の形態学的な性状を比較した論文を完成した(Thyroid 2020)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに自然発症甲状腺乳頭癌の本邦若年者とウクライナ若年者の比較論文(Endocr J.2018),福島若年者症例の解析論文(Cancer Sci.2019)を完成させてきた。 2020年度は研究課題の目標としていたチェルノブイリ,福島,本邦症例の3者を比較する研究の論文化であった。3者の形態学的な比較や福島症例の分子生物学的解析の結果が2編の論文として発行できた(Thyroid.2020, J Clin Endocrinol Metab.2020)。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究計画はチェルノブイリ,福島,本邦症例の3者を比較する研究を深化させ,遺伝子変異の比較を行うことを主眼に置いて進めて行く。被曝線量が大きく異なるチェルノブイリと福島の小児例を対象に甲状腺乳頭癌の主なドライバー遺伝子の頻度(ret/PTC組み換え遺伝子, BRAF点突然変異など)と被曝線量,潜伏期の関連を解析していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で学会出張がなくなり,その分の宿泊交通費の支出がなかったことが大きく影響した。また試薬,抗体の支出が少なく済んだことも挙げられる。
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