研究課題
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は良性の脂肪肝から進展し、肝硬変や肝癌に進行する悪性疾患であるが、その発症機構は不明な点が多く、治療薬もない。核内受容体HNF4αの肝臓特異的欠損マウス(KOマウス)は脂肪肝から酸化ストレスや線維化の亢進を経てNASHを発症し、生後8週程で死に至る。しかし、KOマウスのNASH発症機序の全容解明には至ってない。KOマウスでは核内受容体PPARαの標的遺伝子の多くが発現上昇しているため、PPARαの活性化が予想された。そこで、KOマウスとPPARα欠損マウスを交配させダブル欠損マウス(D-KOマウス)を作製した結果、NASHが改善され、1年以上延命した。PPARαは内因性脂肪酸によって活性化されるので、KOマウスのPPARαの活性化には脂肪酸組成の変化が不可欠である可能性がある。そこで、KOマウスの肝臓の脂肪酸組成を測定した。この結果、C18:0はKOマウスで減少し、C18:1が増加していた。PPARαの標的遺伝子であるFatp1プロモーターの転写活性化能についてC18:0を添加した場合とC18:1を添加した場合を比較すると、C18:1の方がより強い転写活性化を示した。さらに、高いC18:1/C18:0比では、等しいC18:1/C18:0比よりも有意に高い転写活性化能を示した。従って、KOマウスではC18:1/C18:0の増加がPPARα活性化に寄与していることが示唆された。
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