研究課題
アドレノメデュリン(AM)は、多彩な生理作用を有する生理活性ペプチドであり、各種疾患への臨床応用が期待されている。この多生理作用は、AMの受容体に結合する受容体活性調節タンパク質のRAMP1、2、3によって制御されていると考えられているが、詳細な分子機構は不明である。 本研究では、複数同時ゲノム編集という申請者が独自開発した技術によりRAMP1、2、3について複数の変異を併せ持つマウス群を体系的に作製する。同マウス群による炎症性腸疾患などの病態モデルの解析、腸オルガノイドや、 各種の初代培養細胞を用いた検討によりRAMP1、2、3の病態生理学的意義の解明し、AMの臨床応用への知識基盤の構築に貢献することを目標とする。本年度は、昨年度に樹立した RAMP1、2、3遺伝子を体系的に同時ゲノム編集したマウス群の繁殖を進め実験用のマウス個体を先ず確保した。これら体系的同時 RAMP遺伝子群変異マウス群を用いて、(1) デキストラン硫酸ナトリウムによる腸炎症モデルでの病態差の解析、(2) 腹腔マクロファージの取得・培養によるLPSやサイトカインでの炎症刺激における応答性の解析および、(3) RAMP遺伝子群変異腸オルガノイドの作成とその各種炎症刺激における応答性の解析を行った。その結果、RAMP1、2、3遺伝子群の欠損形態と腸炎症病態の重症度の相関から、マウスによる腸炎症病態にはRAMP1、3が主に関わること、そして腸炎症病態の解析からRAMPを発現するマクロファージなどの免疫系細胞から腸組織への作用の重要性を示唆するデータを得た。
2: おおむね順調に進展している
体系的同時 RAMP群ゲノム編集マウスを用いて、本年度の解析目標である (1) デキストラン硫酸ナトリウムによる腸炎症マウスモデル解析、(2) 腹腔マクロファージの取得・培養による炎症刺激における応答性差の解析および (3) RAMP遺伝子変異腸オルガノイドの作成と各炎症刺激における応答性の解析を実施した。
最終年度は、(1) RAMP1、2、3同時遺伝子改変マウスを用いて個体レベルでの炎症腸炎病態解析を続ける。実験用の体系的同時 RAMP群ゲノム編集マウスの繁殖は順調である。かつ我々独自の同時遺伝子改変マウス作製は迅速かつ高効率であるので、もしも必要が生じれば、新規遺伝子改変マウスを追加作製し解析に供する。(2) 同RAMP遺伝子群改変マウス群由来の腸上皮細胞、線維芽細胞、免疫系細胞各々におけるAMや炎症サイトカイン刺激に対する応答性や細胞内シグナル伝達様を検討することで、RAMP1、2、3間の機能分化と相互作用の包括的な理解を得る。(3) そして初年度から取得した全データをまとめ、総括する。
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