研究課題
申請者らは、世界で唯一の組換え近交系膠原病モデルマウスを用いて、膠原病疾患の感受性および治療反応性・抵抗性を規定する因子の解析を行ってきた。これまでに、Opnの蛋白多型が自己免疫性糸球体腎炎感受性を規定することを明らかにし、Opn-インテグリンの結合を阻害することで自己免疫のmalignant cycleを止めることが出来る可能性を見いだした。Opnのインテグリン結合部位には膠原病モデルマウスMRL/lprと膠原病抵抗性マウスC3H/lprの間で多型があり、この多型部位のMRL型に特異的に結合する蛋白をスクリーニングして候補を見つけ出し、Opn-インテグリン結合阻害蛋白候補とした。Opn-インテグリン結合阻害蛋白の候補数種類の中から、腎炎抑制効果のあるものをMXH系マウスへの投与実験により確立した。そこで、次の段階としてOpn-インテグリン結合阻害蛋白による膠原病治療モデルの実施と、治療反応性の解析を目的として、4ヶ月齢~6ヶ月齢のMHX各系統マウスの尿蛋白をテストテープでスクリーニングし、腎炎発症した個体を使用した。Opn-インテグリン結合阻害蛋白を経尾静脈的に、もしくは経左鼠径部リンパ節的に投与する。治療コントロールとしてシクロフォスファミド、陰性コントロールとして生理食塩水を投与した、二ヶ月間薬剤を投与し、投与期間中の尿蛋白、体重を測定した。投与終了後速やかに剖検して腎臓および、血管、関節、唾液腺、涙腺の各臓器病変について組織学的に評価している。さらに、剖検時に血清を採取し、腎機能、炎症マーカー、免疫グロブリン、補体を定量した。治療反応性・抵抗性に関する各種パラメーターを解析し、治療反応性ストレインと治療抵抗性ストレインを見いだした。現在、その遺伝子背景を解析中である。
3: やや遅れている
Opn-インテグリン結合阻害蛋白の開発は、in vitroでの阻害効果の検証にやや手間取っているもののほぼ計画のペースに戻った。一方でRRP8およびTNP1のデコイ蛋白の合成につき、コロナ感染防止のために、共同研究部分が滞っている。その代わりに、既存の投与系へのin vivo解析をn数を増やして先行させ、データ解析を進めている。
低分子化したOpn-インテグリン結合阻害蛋白の合成を急ぎ、今年度にはそれらを用いたin vitro, in vivoの解析を大幅に進捗させたい。また、in vivoの投与系でリコンビナント系マウスの系統間での治療効果の差について、その背景遺伝子の関与につき、予定通りの解析を進めていく。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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