研究課題/領域番号 |
19K07485
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
田中 正彦 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 准教授 (60267953)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 小腸 / グリア細胞 / 肝星細胞 / 膵星細胞 / カルシニューリン |
研究実績の概要 |
グリア細胞特異的カルシニューリンノックアウトマウスにおける小腸グリア細胞と神経細胞・上皮細胞との細胞間相互作用の異常を解析するために、以下の(1)の実験を行った。また、このノックアウトマウスでは肝臓や膵臓の星細胞でもカルシニューリンを欠損すると考えられるので、肝臓の異常を解析するために以下の(2)の実験を行った。 (1)小腸グリア細胞と神経細胞・上皮細胞との細胞間相互作用の異常の解析 (1ー1)小腸グリア細胞から放出される生理活性物質の定量:小腸グリア細胞から放出されて神経細胞や上皮細胞の生存・増殖・分化等を調節するS100Bや腸管バリア機能を促進するTGF-β1の小腸内発現量をWestern blottingによって調べたところ、どちらもノックアウトマウスで低下していることが明らかになった。S100Bの発現は転写因子NF-kBによって制御されることからNF-kB p65の発現量も調べたところ、これも低下していた。 (1ー2)小腸グリア細胞培養系の確立:(1ー1)のような解析を小腸全体ではなくグリア細胞のみで行うことを目的として、小腸グリア細胞の単離培養系の確立を試みた。培養条件の検討を重ねて線維芽細胞のコンタミネーションを抑え、約90%の純度で小腸グリア細胞を培養することに成功した。 (1ー3)小腸グリア細胞と神経細胞の共培養系の確立:小腸グリア細胞と神経細胞との細胞間相互作用を解析することを目的として共培養系の確立を試みたが、現段階では細胞密度が低いことが課題となっている。 (2)肝臓の星細胞や組織構造の異常の解析:肝臓の星細胞の免疫染色を行ったところ、ノックアウトマウスで星細胞の数が減少していることが明らかになった。また、肝臓の組織構造を観察したところ、ノックアウトマウスで類洞が拡張している例が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グリア細胞特異的カルシニューリンノックアウトマウスの小腸グリア細胞から放出される生理活性物質の発現量低下を見出すことができたとともに、次の研究段階に必要な小腸グリア細胞培養系を確立することができた。また、ノックアウトマウス肝臓の星細胞や組織構造の異常を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)小腸グリア細胞と神経細胞・上皮細胞との細胞間相互作用の異常の解析 (1ー1)小腸グリア細胞から放出される生理活性物質・栄養因子の定量:小腸グリア細胞の単離培養系においても、ノックアウトマウスでS100BやTGF-β1およびNF-kB p65の発現量が変化しているかを解析する。また、それ以外にGDNF、BDNF、prostaglandin、S-nitrosoglutathione等の栄養因子・生理活性物質の発現量についても解析する。 (1ー2)小腸グリア細胞と神経細胞との細胞間相互作用の解析:小腸グリア細胞と神経細胞の共培養を確立した上で、ノックアウトマウス由来グリア細胞の神経成熟促進効果に異常があるかを調べる。さらに、この効果に(1ー1)で差が見られた物質が関与するかを調べる。 (1ー3)小腸グリア細胞と上皮細胞との細胞間相互作用の解析:小腸グリア細胞と上皮細胞の共培養を確立した上で、ノックアウトマウス由来グリア細胞の上皮バリア形成促進効果に異常があるかを調べる。さらに、この効果に(1ー1)で差が見られた物質が関与するかを調べる。 (2)肝臓の星細胞や組織構造・消化機能の異常の解析:ノックアウトマウスの肝星細胞数減少を確認し、肝臓の組織構造を詳細に観察した上で、肝臓で生成される胆汁酸の量や活性に異常がないかを解析する。 (3)膵臓の星細胞や組織構造・消化機能の異常の解析:ノックアウトマウス膵臓の星細胞の形態・数・活性化や組織構造に異常がないかを調べる。さらに、膵臓から分泌されるアミラーゼ、トリプシン、リパーゼの量や活性に異常がないかを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)ぴったり使い切ることができなかったため。 (使用計画)次年度使用額(103円)を次年度に必要な物品費にあてる。
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