研究課題
我々が樹立したラット去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)細胞株(PLS10, PLS20, PLS30)はいずれもヌードマウス皮下に生着する。正常免疫能ラットに同所移植するとPLS10は生着するが、PLS20、PLS30では腫瘍は形成されないことを見出している。今回の研究では、PLS10における新規の腫瘍免疫回避機構を見出し、前立腺癌の予防法および治療法の開発に繋がる基礎的なデータを得ることを目的とする。PLS10由来cDNA発現ライブラリーの作成、マイクロアレイ解析による候補遺伝子群の検討、空間トランスクリプトーム解析手法を用いて、責任遺伝子の同定を目指した。PLS10由来cDNA発現ライブラリーの作成を試みたが、適切なcDNAライブラリーを得ることができなかった。そのため、マイクロアレイを用いた解析を進めた。PLS10のみで高発現している9遺伝子を見いだし、CD81、Ccl2、Cx3cl1、Nradd、Tmem252の5遺伝子がPLS10のみで高発現していることを確認した。まずCD81導入PLS30をラットに同所移植したが、腫瘍形成はみられなかった。Ccl2, Cx3cl1についてもそれぞれ遺伝子導入PLS30を作成、移植実験を行ったが、いずれも腫瘍形成は得られなかった。次に生体内における遺伝子発現を検討するために、PLS10, PLS30をそれぞれラット前立腺に移植し、Photo-isolation chemistry技術を用いた空間トランスクリプトーム解析を行った。その結果、PLS10において高発現している遺伝子群が115、低発現している遺伝子群が14見出された。高発現している115遺伝子のなかから候補となる3遺伝子を抽出し、Pmepa1がPLS10で高発現していることが確認した。Pmepa1導入PLS30株を作成し、ラット前立腺腹葉への移植実験を進めているところである。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Scientific Reports
巻: 13 ページ: 11618
10.1038/s41598-023-38746-x