研究課題/領域番号 |
19K07487
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
川村 俊彦 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (70301182)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | NKT細胞 / 肝臓 / 肝炎 / α-galactosylceramide / レプチン |
研究実績の概要 |
NKT細胞は肝臓に豊富に存在し、NK細胞とT細胞の両方の性質をあわせ持つリンパ球であり、MHCクラスⅠ様分子であるCD1dに提示された糖脂質を認識して活性化する。糖脂質である α-ガラクトシルセラミド(α-galactosylceramide:α-GalCer)は、NKT細胞を特異的に活性化するが、これをマウスに投与すると、肝臓の NKT細胞が活性化し、その自己反応性により、正常な自己肝細胞を殺傷して急性の肝炎を誘導する。しかし、この NKT 細胞依存性肝炎のメカニズムは完全には解明されていない。本研究では、レプチンの、NKT 細胞依存性肝炎の病態に及ぼす影響と、そのメカニズムについて明らかにすることを目的とする。 2019年度は、レプチン欠損(ob/ob)マウスおよびレプチンレセプター欠損(db/db)マウスを用いた解析により、2020年度は、正常マウスに予めレプチンを投与しておきレプチン過剰状態を誘導し、また、正常マウスへ抗レプチン抗体および抗レプチンレセプター抗体を投与し、レプチンが機能しない状態での解析を行った。その結果、レプチンが機能しない状態では肝炎が軽症化し、レプチンが過剰に作用する状態では肝炎が悪化し、レプチンが肝炎を悪化させる要因であることがわかった。
以上の結果を踏まえ、2021年度は、レプチンが肝炎を悪化させるメカニズムの解析を行った。まず、リンパ球におけるレプチンレセプターの発現をFACS解析したところ、特にNKT細胞に強い発現がみられた。また、マウスにα-GalCer やIL-12を投与することによりNKT細胞を活性化すると、NKT細胞上のレプチンレセプターのupregulationがみられた。ソーティングした活性化NKT細胞にin vitroでレプチンを作用させたところ、NKT細胞依存性肝炎の誘導に必要なTNF-α産生の強い増強がみられた。以上より、レプチンは、NKT細胞に直接作用し、TNF-αの産生を誘導し、急性肝炎を悪化させていると推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画していた研究自体は、おおむね順調に進展したが、昨年度の結果より、当初想定していたもの以外の要因の解析が必要になり、研究計画を大幅に変更する可能性が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の結果により、レプチンがNKT細胞を直接刺激し、TNF-αの産生を誘導して肝炎を悪化させることが明らかになった。しかし、NKT細胞上のレプチンレセプターの発現を解析した際、肝臓の組織全体におけるレプチンレセプターの発現を免疫組織染色で調べたところ、NKT細胞などの白血球よりも、むしろ肝細胞に強い発現がみられた。このことから、レプチンが肝細胞に作用する可能性も排除できない。肝細胞がレプチンレセプターを発現することから、レプチンが肝細胞に作用し、細胞死を誘導している可能性について追及し、レプチンによる肝炎悪化の要因になっていることを明らかにする。2022年度は、正常マウスおよびレプチンレセプター欠損(db/db)マウスを用いて、レプチンの肝細胞に及ぼす作用の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の実験結果により、想定していた範囲を超えて研究を行う必要が生じ、大幅に研究計画の見直しが必要になった。次年度は、実験動物(ob/obマウス、db/dbマウスなど)、免疫学試薬(抗体等)、細胞培養試薬、実験器具、研究機器などの購入に予算を使用する予定である。
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