研究課題
乾癬、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症といった自己免疫疾患は近年増加の一途をたどり、この病態解明は社会的に緊急かつ重要な課題である。自己免疫疾患の多くは、自己反応性のIL-17産生性ヘルパーT細胞(Th17)が関与するが、Th17が他のヘルパーT細胞に比べて、体内で長期生存するメカニズムは知られていない。本研究では、自己反応性Th17を試験管内で誘導し、これを移入したマウスを解析することを通じ、Th17の長期生存機構を明らかにしようと試みている。本年度は自己反応性Th17を試験管内で誘導する方法について検討した。TCRトランスジェニックマウスよりナイーブT細胞を98%以上の純度で分離し、T細胞レセプター(TCR)刺激、および炎症性サイトカインの存在下で活性化させた。Th17を誘導するとされていた条件では、6日間の培養後したT細胞からIL-17の産生が認められたが、予想に反し、これをマウスに移入してもTh17の生存及び自己免疫疾患の発症が認められなかった。そこで、サイトカインの条件、およびTCR刺激後の培養条件を検討し、一定の条件で高度に病原性のあるTh17を作ることができた。この細胞はマウスに自己免疫疾患を誘導し、コントロールのTh1によっては発症しなかった。以上のことから、マウス体内で長期間生存し、自己免疫疾患を起こす「病原性Th17」を作出することができたと考えている。また、関連してがんメモリーT細胞の作出などに関し論文発表した。
2: おおむね順調に進展している
当初目的通り、生体内で長期生存し、自己免疫疾患を起こすメモリー様T細胞を培養によって作出することができたため、達成度(2)と自己評価した。
今後も、当初研究計画に順じ、移入した細胞を体内で追跡するモデル、薬剤の投与などにより病原性Th17の生存、病原性をコントロールするような実験を行う。
研究に用いる試薬が、購入元メーカーにて生産停止となり、12月より受託サービスを利用して新規調整したため、この支払いが遅れ助成金を持ち越した。新年度4月に抗体の納品があったため、旧年度の予算は予定通り執行した。
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