研究課題/領域番号 |
19K07489
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
伊藤 吹夕 帝京大学, 公私立大学の部局等, 助手 (20415079)
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研究分担者 |
大原関 利章 東邦大学, 医学部, 准教授 (20287501)
河野 肇 帝京大学, 医学部, 教授 (60585074)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | VasSF / Apolipoprotein A-II / Vasculitis |
研究実績の概要 |
本研究は、血管炎の治療に有効である分子標的薬の確立を目的としている。申請者らの研究室では、長年にわたり、難治性血管炎に有効な免疫グロブリン治療の人工化をめざし研究を続けている。これまでにヒトリンパ球からIgG遺伝子をクローニングし、204クローンライブラリーの確立を報告した[ADC Lett. Vol.4(2), 2017]。その中から血管炎自然発症モデルマウスSCG/Kjへの投与により治療に有効な1クローン(VasSFと命名)の選択に成功。さらに血漿成分中に磁気ビーズとVasSFをプルダウンし、共沈物が約10kDaのタンパク質(GAP2とする)であることなどを確認してきた。 そこで本年度は、まず(i)このGAP2分子の同定を行った。GAP2をプルダウンした後、泳動し、ゲルから切り出して質量分析計(MS/MS)を用いてGAP2タンパク質の同定を行ったところ、apolipoprotein A-IIに関連したタンパク質であることがわかった。そこで今後、このタンパク質をVasculitis-associated apolipoprotein A-II(VAP2)と呼ぶことにする。次年度以降、このVAP2が血管炎の治療標的分子であるかどうかを調べていく予定である。 次に同定されたVAP2の塩基配列をもとに (ii) マウスVAP2に対する抗体をrabitで作製させたもの(抗VAP2抗体)を購入し、CAWS誘導血管炎モデルマウスに投与し治療効果があるかを調べた。その結果、抗VAP2抗体の投与は、濃度依存的に血管炎の発生を抑えていることがわかった。(iii)次に大腸菌を用いてリコンビナントVasSFの発現、調整を行い、CAWS誘導血管炎モデルマウスに投与した。現在、この治療効果の評価を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初たてた研究実施計画の通り研究できており、おおむね順調に進んでいる。 令和元年度は、未解明であったGAP2分子の同定をおこない、血管炎に関連したapolipoprotein A-IIであることがわかった。このタンパク質をVAP2と呼ぶことにした。その後、実際にCAWS誘発血管炎モデルマウスに抗VAP2抗体の投与をおこない、治療効果、病態の解析などを行い、この抗体が濃度依存的に治療効果を有することを認めた。さらにVasSFの大量調整をおこなって、CAWS誘発血管炎モデルマウスへの投与、採材までをおこなった。現在この解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も研究計画通りに実施していく予定である。 (i) 昨年度から実施しているCAWS投与血管炎モデルマウスにVasSFを投与した実験の解析をまず行う。VasSFの投与により、病態が変化するか治療効果が認められるかの確認を行う。効果が見られた場合は、各組織におけるサイトカイン、ケモカインの測定をおこなう。また、血管炎のバイオマーカーについてELISAで測定する。さらに抗VAP2抗体を用いて血管炎発症組織の免疫染色をおこなう、VAP2の発現分布や発現細胞に特徴がないかを調べる。ただし、もし治療効果が認められない場合は、VasSFの投与濃度、VasSFの調整法などの各条件を再検討して、数回実験を行う予定である。 (ii) VAP2が血管炎の発症に関与しているかどうかを調べる。健常マウスC57BL/6NにVAP2を投与し、血管炎の発症および病態形成が起こるかどうかをみる。もし起こらない場合は、VAP2以外の共因子が考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度3月に参加予定していた学会が、コロナウイルスの影響で延期になった為、旅費が一部使用できなかった。令和2年度も開催されるか不確定であるが、開催されれば参加する予定である。 また、物品費についても予定していた額を下回った。物品費に関しては、研究内容に応じて、適宜購入、使用していく予定である。
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