研究課題/領域番号 |
19K07492
|
研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
今 重之 福山大学, 薬学部, 教授 (90344499)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | インテグリン / 自己免疫疾患 / スプライシングバリアント / メチマゾール |
研究実績の概要 |
当研究室では、自己免疫疾患に関与するα4 インテグリンとα9インテグリンに着目して研究を進めてきた結果、α4 インテグリンスプライシングバリアント(α4SV)がリガンド選択性を有しながらα4とα9インテグリンを阻害することを見出している。さらに抗甲状腺薬メチマゾールがα9インテグリン活性化を抑制できることを見出した。そこで、今年度は、α4SV やメチマゾールが持つ新たなインテグリン阻害作用機序が自己免疫疾患抑制効果を有することを明らかにすることを目的に研究を進めた。 α4SVは、α4とα9インテグリンの共通するリガンドであるオステオポンチンやpp-vWF(von Willebrand因子のプロポリペプチド部分)は抑制できるが、α4インテグリン特異的リガンドであるファイブロネクチンCS1、α9インテグリン特異的リガンドであるテネイシンCとの接着は抑制しない。このようなリガンド選択特異性を有しながらインテグリン機能を阻害できるα4SVの自己免疫疾患抑制効果を検討した。自己免疫疾患モデルとして、α4やα9インテグリンが増悪化に関与する実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)とDSS(デキストラン硫酸ナトリウム)誘導性大腸炎モデル、関節リウマチモデルである抗コラーゲン抗体誘導関節炎モデルCAIAを使用し、α4SVは腹腔内投与により検討した。その結果、検討した全ての自己免疫疾患モデルにおいて有意な増悪化抑制効果を得ることができた。 また、α9インテグリンの活性化を抑制できるメチマゾールを経口投与しEAE増悪化抑制効果の検討を行った。その結果、病態スコアを有意に抑制することができた。 これらの結果から、インテグリンとリガンドとの相互作用を完全には阻害しないα4SVとメチマゾールは、自己免疫疾患抑制効果を有することを明らかにすることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
α4SVとメチマゾールによる自己免疫疾患抑制効果を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
質量分析によりα4SV の結合分子としてTGF-βを見出している。TGF-βは、自己免疫疾患に関与するT 細胞サブセットTh17 分化に重要な因子であることから、α4SV はTh17 分化にも影響を与える可能性を検討する。 メチマゾールが、α9インテグリンスプライシングバリアントであるSFα9と相互作用するFMO4を介してα9インテグリン活性化を抑制していることを明らかにするため、FMO4ノックダウン細胞を樹立し、細胞接着試験にてメチマゾールによるα9インテグリン活性化抑制にはFMO4が関与することを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度に約2万円繰り越したが、これは注文を予定していた物品が年度内に納入が難しくなったことが理由である。現在、大学がCOVID-19の影響により注文できない状況であるが、大学の再開後、早急に当該物品を注文する予定である。
|