研究課題/領域番号 |
19K07494
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
奥村 和弘 千葉県がんセンター(研究所), がんゲノムセンター 実験動物研究部, 研究員 (80584680)
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研究分担者 |
若林 雄一 千葉県がんセンター(研究所), がんゲノムセンター 実験動物研究部, 部長 (40303119)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多段階皮膚発がん / ランゲルハンス細胞 |
研究実績の概要 |
本申請は皮膚発がん感受性に寄与する表皮細胞(KC)とランゲルハンス細胞(LC)間の相互作用の遺伝学的解析をPak1遺伝子に焦点を当て実施し、発がん感受性に差が生じる機構を明らかにすることを目的とする。これまでに申請者は、発がん抵抗性であるMSM系統に発がん感受性であるFVB系統マウスを戻し交配し、順遺伝学的手法により皮膚がん感受性/抵抗性遺伝子座である(Skin tumor modifier of MSM; Stmm)をマップしている。なかでも最も効果の高いStmm1aの候補遺伝子としてPak1に着目した。Pak1は数多くのがん種においてがん遺伝子として報告されている。我々はPak1の皮膚における詳細な発現解析を実施した結果、Pak1はKCだけでなくLCにおいて最も強く発現することを見出した。そこで、本年度はPak1のLCにおける機能解析をPak1KOマウスを用いて実施した。Pak1のKOマウスはCRISPR/Cas9法によりMSM系統遺伝子背景で作製し、発がん実験やセルソーティングの解析を考慮し、解析にはFVBとのF1マウスを用いた。このマウスの皮膚表現型を解析した結果、これまでに報告のないKi67陽性細胞数の増加、Th17関連因子の特異的な増加およびTh17の増加がみられた。またin vitro実験においてLC由来細胞株のXS52とKC由来の細胞株C5Nを用いて解析を実施した結果、XS52におけるPak1発現低下は増殖能の低下、細胞遊走の低下がTh17依存的および非依存的に生じること、またパラクライン作用によりKCの細胞増殖能を上昇させることを見出した。今後はこれらのマウスを発がん実験に供試することで、LCにおけるPak1が発がんにどのような影響を与えるか検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では表皮細胞におけるPak1の解析を実施する予定であったが、計画よりもランゲルハンス細胞における解析が順調に進んだため、全体としておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ランゲルハンス細胞におけるPak1の解析が計画よりも順調に進展したため、そちらの遺伝子改変マウスを用いた発がん実験を優先的に進め、論文化を目指す。また、表皮細胞におけるPak1の機能解析に向けてCRISPR/Cas9法によりコンディショナルKOマウスの作製と3’UTR改変マウスの作製を重点的に進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はすでに作成済みの遺伝子改変マウスおよび細胞株の解析を中心に行ったため、少額で済んだが次年度は発がん実験と腫瘍解析、あらたな遺伝子改変マウスの開発を計画しているため次年度使用額を計上する。
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