研究課題/領域番号 |
19K07495
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
疋田 智也 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍制御学分野, 研究員 (20600935)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エクソソーム / がん |
研究実績の概要 |
腫瘍微小環境および前転移ニッチの形成など、がん細胞由来エクソソームの様々な機能が報告される一方、実際どの程度がん病態に影響しているかは明らかでない。本課題では、がん病態に則したエクソソームの非侵襲的生体イメージングモデルを構築し、それを利用した機能解析を通して本来のエクソソーム機能を明らかにすることを目的とした。1)生体イメージングに適した高波長光を発するBRET(bioluminescent resonance energy transfer)プローブによるエクソソーム標識化、及び定量化細胞の作製に成功した。2)BRET標識エクソソーム産生細胞をマウス皮下に移植することで、血中及び組織集積エクソソームを発光として測定・観察可能なモデルマウスを作製した。本モデルマウスは、エクソソームの短期的な動態だけでなく、がん病態を模倣した長期的な循環・集積動態を観察することが可能であった。3)組織におけるエクソソーム集積について、BRETプローブに対する免疫組織染色でも確認することが出来た。4)in vitroの解析で見出したエクソソーム阻害剤の効果を、本モデルマウスでも確認することが出来た。本結果は、今後開発が期待されるエクソソーム阻害薬の生体評価系としての有用性を示している。現在、がんエクソソームの真の機能を明らかとするため、集積が見られた組織における組織学的及び分子学的解析を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BRETプローブを用いて、がんエクソソームの放出、循環、組織集積に到る長期動態を観察可能なエクソソーム生体イメージングマウスの作製を行った。また、エクソソーム阻害剤を本モデルマウスに投与することで、エクソソーム機能阻害薬評価系としての有用性を証明した。本年度で研究計画のおおよそ半分が終了し、現在、エクソソーム集積組織における変化を中心に解析を進めている。また、これまでの研究結果を論文にまとめ現在投稿しているところである。以上の内容から、進捗状況としてはおおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中ではあるが、エクソソーム集積組織における発現機能について組織学的及び分子学的解析により明らかにしていく予定である。また、様々ながん細胞の長期動態を観察することで、がん種や細胞の違いによる集積組織の特異性やその発現機能に差異があるかに検証を行っていきたい。さらに、がん転移の臓器指向性をエクソソームが担っているのかについて、本エクソソームイメージングマウスを用いて解析を行っていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
思ったほど予算を計上せずにエクソソームイメージングマウスの作出に成功したため、本年度おおよそ予算の半分が繰越しとなった。本研究は3年計画であり、エクソソーム集積組織の分子学的解析に多額の費用がかかる。そのため、マウス費用の余剰分を本解析費用にあて、より詳細かつ体系的な結果取得を行う。
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