研究課題/領域番号 |
19K07497
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
大森 泰文 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (90323138)
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研究分担者 |
山本 洋平 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (70400512)
西島 亜紀 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (40566105)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 小胞体ストレス応答 / コネキシン / がん幹細胞 / ギャップ結合 / 放射線耐性 / パネキシン |
研究実績の概要 |
令和元年度は、以下の3つの点について研究を進めた。 ①がん幹細胞(CSC)の新規マーカーCD98hcの同定・・・先に我々は、connexin26 (Cx26)がゴルジ体に局在する時に造腫瘍能が高まることを明確に示した [Int. J. Mol. Sci. 19: e2134 (2018)]。すでに我々はゴルジ体に局在するCxには、CSCの自己複製を促進する機能があることを見出している[Int. J. Cancer 128: 51-62 (2011)]。ゴルジ体に局在するCxが放射線ストレス応答とCSC自己複製の両方に関与する可能性を探るため、放射線耐性とCSCを1つのマーカーで検出できるかどうか検討し、CD98hcがその条件を満たしていることを報告した[Kawasaki et al., Arch. Med. Sci. (in press)]。 ②ゴルジ体に局在するCxの機能は、活性化型ATF6αによって再現されるか・・・我々は、ゴルジ体に局在するCxがATF6αを活性化することでストレス適応応答を惹起し、CSCの自己複製を促進するものと予想している。そこで構成的活性化型ATF6αを発現するウイルスベクターを作製し様々な細胞に導入したところ、Cxの多寡や局在部位の如何に関わらず、CSC画分が増加することが分かった。 ③パネキシン(Panx)はゴルジ体に局在し得るのか・・・Cx関連タンパクであるPanxは細胞膜上でchannelを形成するが、小胞体(ER)膜上でもchannelを形成し得ることが他のグループにより明らかにされた。そこで、ERストレスの有無により、Panxの局在に変化があるかどうか、様々な条件下で検討した。現在のところ、ゴルジ体におけるシグナルが弱いながらも確認されている。現在、より鋭敏な検出系により確証を得るよう検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
放射線ストレスに対する適応応答能とCSCを同時に評価するための単一マーカーとして、CD98hcを同定することができ、これをまとめた論文が受理された[Kawasaki, *Omori et al., Arch. Med. Sci. (in press) *corresponding author]。これは本研究を推進するうえで、非常に有用な検出系となることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
①ゴルジ体におけるCxタンパクの詳細な局在およびそのフォームを明らかにする・・・Cxタンパクの局在がゴルジ体なのか小胞体‐ゴルジ中間区画(ERGIC)なのか、ゴルジ体ならばゴルジ体膜なのかゴルジ基質なのかを決定するために超解像顕微鏡を用いて検討する。またこのときのCxタンパクはいかなるフォームで存在しているのか、6量体を形成しチャネルのフォームで局在しているのか、単量体で浮遊しているのか等を知るために、透過電顕による観察、および免疫電顕による確認を行う。材料として、Cx32タンパクの細胞膜への輸送が出来ず、過剰なCx32がゴルジ体に留まっているHuH7肝細胞癌細胞や、内在性Cxタンパクを発現しておらず、その代わりにゴルジ体停留シグナル(AKKFF)をC末に付加した変異Cx26タンパクを過剰に発現させた種々の細胞、またCx43を元来高発現し細胞膜への輸送も正常に行われるIAR20細胞を使用する。 ②CxタンパクとS1PやS2PもしくはATF6αとの相互作用の検討・・・ゴルジ体に局在するCxタンパクが、S1PやS2Pプロテアーゼと相互作用し、ATF6αの活性化(断片化)を促進している可能性を探るために、免疫沈降法で両者の結合を検討する。また、Cxタンパクがゴルジ体ではなく、ERGICに局在している場合、CxとATF6αが結合している可能性もあり得る。この点に関しても免疫沈降法にて検討する。さらにATF6αの不活化型と結合しているのか、それとも活性化型と結合しているのかを調べる。これらの相互作用が確認できた場合、Cxタンパクのどの領域が相互作用に関与しているのか、Cxのdeletion mutantを用いて決定する。さらに、相互作用を欠損した変異Cxを導入した際に、がん細胞の造腫瘍能やがん幹細胞の自己複製能にどのような影響が生じるか調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の世界的蔓延のために、購入予定だった試薬類の海外での生産が休止したことにより本年度内に支出できなかった。生産再開後に使用する予定である。
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