本研究の目的は、上皮障害後の治癒過程早期に出現する、創傷部を被覆する扁平な未分化細胞を生体内イメージングで追跡し、幹細胞への脱分化を惹起する特異的因子を同定することである。2021年度までに、小腸上皮障害マウスモデルとして、開腹下に管腔内にカテーテルを挿入して腸管内処理を行ない、任意の小腸領域に上皮欠損を作製する技術を確立し、このモデルを解析して上皮傷害発生後の早期、短時間のみ出現する創傷部を被覆する扁平な未分化細胞が出現することを確認した。さらに、この未分化細胞の遺伝子発現解析を行うためのRNA収集方法として、目的の細胞を選択的に採集するレーザーマイクロダイゼクション技術を確立した。また上皮創傷治癒過程を生きたままのマウスで体外から追跡するin vivoイメージングマウスモデルとして、マウス腹壁に小腸を体外から観察可能なabdominal imaging window(AIW)を装着する技術を検討した。 2022年度は、2021年度から引き続いてAIWを装着する腸管・腹壁の部位、固定方法、また、AIWを装着させたマウスがこれを脱落させることなく、健常な状態で生存する管理・飼養方法の最適化を行ない、一定期間生存させることに成功した。この技術を用いて、前述の小腸上皮障害マウスモデルにAIWを装着する手術を施しAIWを介して上皮障害部を体外から観察する技術検証を行なった。また、AIW非装着の小腸上皮障害マウスモデルの腸組織を用いて、レーザーマイクロダイゼクション技術によって、上皮障害部に出現する未分化細胞サンプルからRNAを抽出し遺伝子発現を進めた。
|