2020年度は下記のごとく好塩基球選択的プロテアーゼmMCP-8の機能解析に注力し研究を推進した。 好塩基球の関与が報告されているオキサゾロン誘発性アトピー性皮膚炎モデルをmMCP-8ノックアウトマウスと野生型マウスで実施し、皮膚の腫脹・血管透過性亢進など生体反応を比較検討することで、mMCP-8のアトピー性皮膚炎病態形成における病態生理学的機能を生体レベルで解析した。 また、同アトピー性皮膚炎モデルで炎症局所・所属リンパ節・末梢血における各種白血球数、サイトカイン・ケモカイン産生量、炎症病理像をFACS、ELISA、Q-PCR、免疫組織染色により定量解析してmMCP-8の炎症惹起機構を解析した。これまでの基礎解析の結果、mMCP-8は線維芽細胞に作用しケモカイン産生を誘導することで、白血球浸潤を誘発することを見出している。そこで各種分子生物学的手法により昨年度から線維芽細胞に存在するmMCP-8標的受容体の探索を行っているが、本年度は新たにレトロウイルス発現クローニング法を駆使してその同定を試みた。 研究機関全体を通じて実施した研究は、1. 好塩基球選択的プロテアーゼ(mMCP-11、mMCP-8)のアレルギー炎症における役割の解明、2. 好塩基球選択的プロテアーゼの標的分子同定と炎症惹起分子メカニズムの解明であり、本研究により好塩基球の炎症惹起機構の一端が明らかとなった。本研究成果によって今後、好塩基球を標的とした抗アレルギー新薬の開発が促進されることが期待される。
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