研究課題
GPIアンカー型膜タンパク質CD109は,種々の扁平上皮癌・脳腫瘍・肺腺癌などの多くのヒト腫瘍組織で発現が増強し,これらの腫瘍の発症ないし進展を助長する分子であることが近年明らかとなりつつある.しかし,一方で,CD109が悪性腫瘍においてそのような機能を示すメカニズムについては依然として不明な点が多い.これまで我々は,全身でCD109を欠失するCD109ノックアウトマウスを作出し,その表現型解析を行ってきた.その中で,本マウスにおいて骨の脆弱化が認められるとともに,ヒトおよびマウス組織を用いた検討によりCD109が骨芽細胞に発現していることが明らかになったことから,本研究は,骨芽細胞が悪性化した腫瘍である骨肉腫におけるCD109の役割を解析することで,CD109の生理学的機能および悪性腫瘍の増悪因子としての機能の本態を解明しようとするものである.前年度までに同定した,CD109の発現が増強している複数のヒト骨肉腫由来細胞株を用いて,細胞生物学的な検討を行った.CD109はTGF-βシグナル系において抑制的に働く補助受容体としての機能が知られているため,骨肉腫細胞株においても同様の機能を持つか,複数の細胞株に対してTGF-β1刺激することでin vitroで検討したが,CD109ノックダウン群とコントロール群で有意な差は認められなかった.そこで,解析対象をTGF-βスーパーファミリーに広げ,TGF-β1以外のリガンドを使用した検討を開始し,現在解析中である.また,並行してCRISPR/Cas9法を用いたCD109ノックアウト細胞の作製も順調に進行しており,これまでにCD109の発現が消失している細胞株のクローニングが完了した.
3: やや遅れている
研究計画に沿って,骨肉腫細胞株およびヒト骨肉腫組織を用いた検討を進めているが,CD109結合分子の同定に当初の予定よりも時間を要している.CD109ノックアウト細胞が得られたため,この細胞の利用を含め,研究計画に基づいて研究をより一層進展させたい.
各種細胞株を用いて,引き続き腫瘍の進展において重要な役割を果たすCD109結合分子の同定を目指すとともに,骨肉腫におけるTGF-βスーパーファミリーとCD109の相互作用について検討を継続する.また,研究計画に沿って,骨肉腫マウスモデルを用いた実験を計画中である.
研究の進捗がやや遅れており,当初行う予定であったCD109結合分子に基づいた個体レベルあるいは組織レベルでの検討が未実施であるため,次年度使用分が生じた.今年度はヒト組織またはマウスモデルを用いた解析を行う計画である.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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