研究課題/領域番号 |
19K07508
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
千葉 陽一 香川大学, 医学部, 准教授 (30372113)
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研究分担者 |
古川 絢子 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助教 (10455537)
上野 正樹 香川大学, 医学部, 教授 (30322267)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / 細胞老化 / アストロサイト |
研究実績の概要 |
本年度はマウス新生仔由来初代アストロサイトの単離と細胞老化誘導条件の検討、ならびに細胞老化マーカー発現状態の解析を行った。初代混合グリア細胞からミクログリア、オリゴデンドロサイト前駆細胞を順次振盪により除去し、培養容器底面に残存した細胞を回収し再播種する方法で高純度のアストロサイトが得られることを確認した(ミクログリアの混入は1%未満)。抗ACSA-2抗体を用いた磁気分離法によっても高純度のアストロサイトを初代培養の時点で得られることも確認できたが、継代による老化誘導では老化細胞を得るのに数か月単位の時間がかかること、細胞密度が減少するためプロテオミクス解析に十分な量の蛋白質サンプルを得るのが困難であることが予想されたため、本研究では以後酸化的ストレス負荷により細胞老化を誘導したアストロサイトを用いて解析を進める方針とした。200μM 過酸化水素含有培地で2時間処理した後、7日間培養した初代アストロサイトにおける細胞老化マーカーの発現につき、老化関連βガラクトシダーゼ(SA-β-Gal)の陽性率に加え、γ-H2AX, p21, HMGB1免疫染色による評価を行った。形態学的には過酸化水素負荷により明らかに細胞質の大きな老化形態を示すアストロサイトが増加した。SA-β-Galとγ-H2AXの陽性率は過酸化水素負荷により40~50%程度であった。p21免疫染色では明確な染色像は得られず、ウェスタンブロットによる評価が必要と考えられた。HMGB1はSenescence-associated secretory phenotype (SASP)の構成要素と考えられており、老化細胞では核における発現が消失するとされている。過酸化水素処理後のアストロサイトではほぼ全ての細胞でHMGB1の核発現が消失していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は並行して実施していた別課題の研究に関する原著論文、総説の執筆等にエフォートを割いたことと、想定以上に実験条件の設定のための予備実験に時間とリソースを費やさざるを得なかったため、予定よりも進捗は遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの予備的な実験でマウス新生仔由来初代アストロサイトに効率的に細胞老化を誘導するプロトコルを確立することができたので、この手法に基づいてC57BL/6マウス新生仔由来の初代アストロサイトを用いて、老化アストロサイトとコントロールとの間での蛋白質発現パターンの違いを2D-DIGE法で網羅的に解析する。この結果同定された、老化アストロサイトで発現が変化する分子を対象に、老齢マウス脳組織、老化促進と加齢性神経変性のモデルであるSAMP8マウスの脳組織を用いて免疫組織化学、ウェスタンブロットによりin vivoでの加齢による発現変化を検証する予定である。SAMP8マウスについてはすでに若齢、高齢の脳組織のパラフィン包埋標本および新鮮凍結脳サンプルを作製済みであり、直ちに検証に移ることができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
プロテオミクス解析を行うためのサンプル採取まで2020年度は至らなかったため、学外分担者に配分した研究費に残金が生じた。2021年度にプロテオミクス解析を行うための経費として繰り越し、使用する予定である。
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