研究課題/領域番号 |
19K07509
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
内木 綾 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (20509236)
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研究分担者 |
野尻 俊輔 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (50381843)
高橋 智 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (60254281)
加藤 寛之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (80791293)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | NASH / 細胞間コミュニケーション / 疾患モデル / 肝線維化 |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) は急増し、肝癌に進展することから予防法の開発が望まれている。我々はこれまでに、肝細胞ギャップ結合タンパクであるconnexin 32 (Cx32)のドミナントネガティブトランスジェニック(Tg)ラットに対して、methionine choline deficient diet (MCDD)を用いてNASHを誘導した。その結果、野生型(Wt)ラットと比較してTgラットでは、明らかな炎症、肝障害、線維化および発がん性の亢進を認めた。このTg-MCDDモデルは、ヒトNASHに組織像は類似していたが、肥満、インスリン抵抗性などNASHに伴う代謝環境が異なっていた。そこで本年度は、メタボリックシンドロームを随伴するNASHモデルを新たに確立するため、 7週齢雄Tgラットおよび野生型 (Wt) ラットに、高脂肪食とdimethylnitrosamineを投与しNASHを惹起し、ジェノタイプの差を検証した。その結果、高脂肪食の投与により、いずれのジェノタイプにおいても体重、肝重量、精巣周囲脂肪織重量が増加した。Tgラットにのみ、血中インスリン値、インスリン抵抗性指標HOMA-IRの有意な上昇を認め、肝炎症細胞浸潤、線維化、肝逸脱酵素(AST, ALT)、炎症性サイトカイン(Tnfα, Tgfβ, Il1β, Timp2, Col1a1)、活性型NF-κBおよびJNKが、Wtと比較して有意に亢進した。肝発がん性に関しても、TgラットにおけるGST-P陽性細胞巣(数、面積)は、Wtラットと比較して、有意に増加した。以上のことから、Tg-HFD-DMNモデルは、新規NASH評価系として有用であることが示唆された。次年度以降はこのモデルで得られた肝組織や血清を用いて、肝細胞ギャップ結合機能異常によるNASHの増悪に関するメカニズムを検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、NASHの誘導法の改良により、以前に自らが作製したNASHモデルより、明らかに有用なモデルを作出することに成功した。モデル作製には、検証結果によっては大幅な改善が必要であるが、本研究の結果は申請者がこれまでの研究結果に基づいて予測した範疇であり、研究を計画通りに遂行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.肝細胞エクソソームと星細胞による相互作用解析:Cx32ΔTgとWtラットの肝細胞エクソソームをマイクロアレイにより比較解析し、星細胞の活性化に関わる肝細胞エクソソーム因子を同定する。 2.Cx32ΔTgラットNASH肝組織を用いた免疫組織学的検討:TgとWtラットのNASH肝組織を用いて、cleaved-caspase 3 (アポトーシス)、α-SMA (活性型星細胞)、F4/80 (マクロファージ) の免疫染色を行うことにより、活性型星細胞やMφの局在と肝細胞GJICとアポトーシスの関連を解析する。 3.ヒト肝細胞/星細胞の共培養実験:Cx32siRNAによりGJICを阻害したヒト肝細胞HepaRGと対照細胞に、TNFαによりアポトーシスを誘導する。それぞれヒト星細胞LX-2と共培養を行い、活性型星細胞の誘導を比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
NASH臨床検体の収集を行った。その検体を用いた免疫染色の解析を次年度に行うことになったため。、
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