研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) は近年急増する慢性肝疾患で、肝線維症や肝癌に進展することから予防法の開発が望まれている。肝細胞ギャップ結合タンパクであるconnexin 32 (Cx32)をドミナントネガティブに阻害し、細胞間コミュニケーション能が低下したトランスジェニック(Tg)は、野生型 (Wt)ラットと比較して、化学物質に対する感受性が高い。昨年度、7週齢雄TgラットおよびWtラットに、high fat diet (HFD)とdimethylnitrosamine (DMN)を投与しNASHを惹起した。その結果、肝におけるNASH、線維化や前癌病変とともに、肥満やインスリン抵抗性などのメタボリックシンドローム症状も誘導されることが明らかとなった。本年度は、このTg-HFD-DMNモデルを用いて、ラクトフェリンによるNASHの化学予防効果の検証を検証した。ラクトフェリン100または500 mg/kg/dayを投与した結果、脂肪肝炎、肝線維化は有意に抑制され、このモデルの肝において遺伝子発現が上昇する炎症性サイトカイン(Tnfα, IL6, Tgfβ1, Il1β, IL18, Timp2, Col1a1)とNF-κBシグナルの活性化に対する抑制効果を認めた。ラクトフェリン投与群では、αSMA陽性活性型肝星細胞が減少しており、肝線維化の抑制に関与していると考えられた。HFDとDMNを投与したTgとWtラットの血清からエクソソームを抽出し、マイクロアレイによりマイクロRNAの発現変化を検討した。Wt-HFD-DMNあるいはTg-controlと比較して、Tg-HFD-DMNで発現上昇あるいは低下するマイクロRNAを認め、肝細胞障害や肝星細胞の活性化に関与する可能性が示唆された。
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