研究課題/領域番号 |
19K07510
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
志馬 寛明 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (70372133)
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研究分担者 |
山崎 小百合 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (70567255)
小田中 瑞夕 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (00510281)
今井 優樹 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (30440936)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / 免疫制御 / 皮膚 / 創傷治癒 / 炎症 |
研究実績の概要 |
紫外線に暴露した皮膚では、制御性T細胞(regulatory T cell, Treg)の増加が顕著に見られるが、それらの役割は解明されていない。本研究課題では、紫外線照射によって皮膚で増加する制御性T細胞(UVB-skin Treg)の機能解析を行っている。UVB-skin Tregの網羅的遺伝子発現解析(RNA-seq)の結果を他の臓器の制御性T細胞のデータと比較することにより、特徴的な遺伝子発現パターンを見出した。オーバーラップする遺伝子は数少なく、Tregは各臓器の環境の違いに適応して機能を特化させていることが示唆された。UVB-skin Tregの最も特徴的な発現遺伝子は、Penk (proenkephalin, PENK、メチオニンエンケファリンの前駆体)であった。また、他にもアンフィレグリン(Areg)や血管新生に関連する因子など創傷治癒に関連する遺伝子の発現が特徴的であった。マウスの皮膚創傷モデルで検討すると、紫外線を前もって照射しておくことで、治癒が促進された。マウスの体内からTregを除去するとその効果は消失した。また、skin explantアッセイで、UVB-skin Tregから産生されるメチオニンエンケファリンやAregが、ケラチノサイトの増殖や運動性を高めて再上皮化を促進することを示した。再上皮化の促進は、創傷部位の皮膚組織切片でも確認できた。以上のことから、UVB-skin Tregには皮膚の創傷治癒を促進させる機能があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の進捗として、UVB-skin Tregが創傷治癒を促進することを明らかにし、成果をPNAS誌上で発表した(令和2年8月)。さらに、Tregの割合が増加するメカニズムに関する解析を進めており、そちらも順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
紫外線照射によって、皮膚でUVB-skin Tregが増加するメカニズムの解析を引き続き行う。皮膚の複数の樹状細胞サブセットの数や活性化状態、局在の変化を詳細に調べ、Treg増加に必須のサブセットを同定しつつある。また、Treg増加に関わる分子の候補を見出すことができているので、メカニズムの解明につなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
UVB-skin Tregの機能解析を優先して、一部の実験の実施を次年度に延期したことに加えて、学会参加がオンライン開催となり、旅費の使用がなくなったため未使用金が生じた。来年度の消耗品の購入に使用する予定である。
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