研究実績の概要 |
NOTCHシグナルの活性化が骨格筋幹細胞の自己複製に重要であることが報告されている(Cell reports 30, 1491, 2020)。我々は4つあるプロスタグランジンE2のレセプター(EP1-EP4)の一つ、EP2がNOTCHシグナルの下流で活性化され、筋前駆細胞の自己複製を促進することをヒト骨格筋前駆細胞を用いて明らかにした。さらにEP2のシグナルはプロスタグランジンE2の産生レベルではなく、主にEP2の発現レベルによって制御されている可能性を遺伝子過剰発現実験とshRNAによるノックダウンの実験で示した。多くの細胞種においてEP2の下流でアデニル酸シクラーゼ(AC)/cAMP/プロテインキナーゼA(PKA)シグナル伝達経路が働いていることが知られているが、骨格筋前駆細胞においてはAC/cAMP/PKAシグナル伝達経路はその自己複製の制御には関与していないことも特異的阻害剤や活性化剤による検討によって明らかにした。これらの結果は論文として発表した(Sakai-Takemura et al., Communications Biology, 3, 182, 2020)。EP2の働きをin vivoで詳しく解析するために、PAX7-CreERT2マウスとEP2floxマウスを入手し、その交配を開始した。タモキシフェン投与により、骨格筋組織幹細胞である筋衛星細胞特異的にEP2遺伝子を破壊して、筋衛星細胞の増殖・分化・自己複製におけるEP2の働きを解析する予定である。また老化に伴う筋萎縮におけるEP2の働きも併せて解析する予定である。
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