研究課題/領域番号 |
19K07522
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
新井 明治 香川大学, 医学部, 准教授 (30294432)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マラリア伝播阻止 / 希少糖 / D-アロース / ハマダラカ |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに、希少糖D-アロースを蚊に吸わせることで、蚊体内でのネズミマラリア原虫の発育をほぼ完全に抑制し得ることを見出している。本研究では希少糖による抗原虫作用機序の解明を目指している。 本年度はD-アロースが蚊の体内で代謝されて生じるD-アロース-6リン酸が原虫発育抑制効果を発揮するという仮説を立てて実験を行った。D-アロース溶液をハマダラカに与え、経時的にサンプリングして破砕し、高感度高速液体クロマトグラフィーによりD-アロースおよびD-アロース-6リン酸の測定分析を行ったところ、D-アロースは検出されたものの、D-アロース-6リン酸は検出されなかった。これにより、D-アロースが蚊の体内で代謝されて原虫発育抑制効果を発揮するという仮説は否定された。次に検討すべきは、マラリア原虫自身がD-アロースを取り込み、D-アロースが直接あるいはその代謝産物が原虫発育を阻害するという可能性である。これまでの研究で、D-アロースは原虫のD-グルコース取込みを阻害しないことがわかっているが、D-アロースそのものが原虫のトランスポーターを通るか否かは不明である。本年度、蚊の破砕サンプル中のD-アロースを検出する実験系を確立できたことから、原虫サンプルについてもD-アロースの検出が可能であると考えられる。蚊とマラリア原虫では大きさが全く異なることから、サンプル調製には極めて多くの原虫を必要とするが、作用機序解明のためには必須である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
D-アロースを与えた蚊においてD-アロース-6リン酸が検出されなかったことは、当初の作業仮説の一部が成立しないことを意味するが、一方で媒介蚊においてD-アロースは代謝されないことを示す重要な知見であり、トータルとして「おおむね順調に進展している」と判断したい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究ではD-アロースの作用機序の解明を目指して、蚊体内で生じるD-アロースの代謝産物(D-アロース-6リン酸)の分析を試みたが、検出されなかった。これにより、D-アロースが蚊の体内で代謝されて原虫発育抑制効果を発揮するという仮説は否定された。次に検討すべきは、マラリア原虫自身がD-アロースを取り込み、D-アロースが直接あるいはその代謝産物が原虫発育を阻害するという可能性である。これまでの研究で、D-アロースは原虫のD-グルコース取込みを阻害しないことがわかっているが、D-アロースそのものが原虫のトランスポーターを通るか否かは不明である。本年度、蚊の破砕サンプル中のD-アロースを検出する実験系を確立できたことから、原虫サンプルについてもD-アロースの検出が可能であると考えられる。蚊とマラリア原虫では大きさが全く異なることから、サンプル調製には極めて多くの原虫を必要とするが、作用機序解明のためには必須である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年1月に開始した実験の結果をみてから次回の実験に必要な消耗品を購入する方が効率が良いと判断した。発生した差額については、2020年度の助成金とあわせて、2020年度に実施する培養実験に使用する消耗品の購入に充当する。
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