我々は、ブルーレイディスクの光学系を応用した全自動マラリア診断装置(MCD)の開発を行った。MCDはCD型のカセットとCDプレイヤー型のイメージリーダーからなる。カセット中心部の注入口に血液をアプライし、イメージリーダーにセットする。イメージリーダーにより、カセットを遠心し、赤血球の検出部での単層配列が可能である。検出部には蛍光核染色色素が凍結乾燥されており、赤血球内のマラリア原虫が染色される。イメージリーダーにより、赤血球および染色されたマラリア原虫が検出され、パラシテミアが自動算出される。最適な治療法選択には、薬剤耐性の解析が重要である。本研究は、これらが可能なMCDを作製し、マラリア排除に貢献できる診断デバイスの開発を目指す。適切な診断、治療には、マラリア原虫の薬剤耐性を調べることは重要である。薬剤耐性は種々の濃度の薬剤を含む培地中で数日培養後、原虫の増加を解析することで、薬剤耐性を有するかを判定するが、流行地でのマラリア原虫の培養は設備や試薬の調達が難しい。ミトコンドリアの膜電位のインジケーターを用いた原虫の生死判定法が報告されている。本試薬が生きた原虫に取り込まれるとミトコンドリアが強い蛍光を発するが、死んだ原虫の場合は蛍光を発しないことから、培養不要のハイスループットな薬剤耐性試験の開発を示唆する。そこで、R3年度は、ミトコンドリア膜電位インジケーターを用いた薬剤耐性試験を行うことが可能なMCDの作製を目指した。具体的には、現在のMCDのレーザーで検出可能なインジケーター(AIE Mitochondria Blueなど)を用いて、ミトコンドリアの蛍光強度を測定した。蛍光顕微鏡またはイメージサイトメーターでは細胞の生死判定は可能であったが、現行の機器では検出感度が足りず、原虫の検出ができないことが明らかになった。引き続き、別薬剤の選定および機器の改良を進めている。
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