研究課題/領域番号 |
19K07533
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
平川 秀忠 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (80431758)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 尿路感染症 / 薬剤耐性 / 病原性 / バイオフィルム / 環境応答 / 発現制御 |
研究実績の概要 |
本研究では、尿路感染症の主要な起因菌である尿路病原性大腸菌(UPEC)に着目し、感染尿路系細胞内におけるマイクロコロニー形成誘導に寄与する本菌の環境感知応答システムとその活性化条件の同定を行うことで、UPECの病原性誘導のメカニズムを理解することを目的とする。 本研究1年目では、UPECの環境感知応答システム過剰発現株(30種類)を作成し、これら各環境感知応答システムを人為的に活性化させる系の構築を完了した。96穴プレートを用いた簡易マイクロコロニー形成評価系を用いて、環境感知応答システム活性化株においてマイクロコロニー形成能の評価定量を行った。その結果、HprSR、BtsST,、CpxAR、など数種類の環境感知応答システムをそれぞれ活性化させるとUPECのマイクロコロニー形成が増大する一方で、CytR活性化株では、マイクロコロニー形成能が低下していることが分かった。また、膀胱上皮細胞に対する付着、侵入能の評価も行ったところ、HprSR、BtsST,、CpxAR活性化株はいずれも高い付着、侵入能を有しており、CytR活性化株では付着、侵入能が低い傾向にあることも明らかにした。その中で、CytR活性化株は、鞭毛の発現抑制に起因して、マイクロコロニー形成および、膀胱上皮細胞に対する感染力が低下していることを発見した。さらに、CytRは鞭毛発現のリプレーサーであることを証明し、その成果をBiochemical and Biophysical Research Communications誌に発表した。次年度は、HprSR、BtsST,、CpxARをはじめとするその他の環境感知応答システムに注力し、マイクロコロニー形成誘導の原因因子および、環境シグナルを同定することで、より詳細な分子メカニズムの解析を行うと共に、マウス感染モデルを用いた評価も行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、計画通りUPECの環境感知応答システム活性化株の構築を行い、1次スクリーニング系により、マイクロコロニー形成に関与する環境感知応答システムの同定に成功した。さらに、先行して、膀胱上皮細胞を用いた病原性の評価も行った。以上のことから、進捗状況として(2)おおむね順調に進行していると評価するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、CytRに加えて、HprSR、BtsST,、CpxARをはじめとするその他の環境感知応答システムに注力し、マイクロコロニー形成誘導の原因因子を同定することで、環境応答システムを介したマイクロコロニー形成誘導の分子メカニズムについて、より詳細な解析を行う。さらに、マウス感染モデルを用いた評価も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の物品購入に際して、安価な代替品を購入するなどして、当初の支出予定額よりも少なくなった。研究は計画通り順調に進んでおり、3年目に行う計画を一部2年目に前倒しすることを想定し、前年度の繰越金を前倒し実験のための物品購入費に充てることを想定している。
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