研究課題/領域番号 |
19K07537
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
相川 知宏 京都大学, 医学研究科, 助教 (70725499)
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研究分担者 |
野澤 孝志 京都大学, 医学研究科, 助教 (10598858)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Beclin 1 / A群レンサ球菌 / 細胞侵入 / AKT/PKB / ILK1 |
研究実績の概要 |
Beclin 1(autophagy-related gene, Atg6の哺乳類オルソログ)は、栄養飢餓時に誘導される細胞内の自己成分分解機構であるオートファジーの誘導において重要な役割を担っている。実際、Beclin 1を欠失した細胞では栄養飢餓時のオートファジー誘導は著しく抑制される。一方、細菌感染時に誘導されるオートファジー(ゼノファジー) は、栄養飢餓時に誘導されるオートファジーとは異なり、標的細菌を選択的に認識・分解する機構である。我々は先行研究において、A群レンサ球菌に対するゼノファジーの誘導がBeclin 1の欠損細胞では抑制されないことを報告した。一方で、Beclin 1欠損細胞ではA群連球菌の宿主細胞への侵入が抑制されていた。Beclin 1による細胞侵入制御機構の詳細なメカニズムは不明であったことから、Beclin 1を構成する3つの領域(BH3、CCD、ECD)をそれぞれ欠失させた細胞を作成し、A群レンサ球菌の侵入を制御するBeclin 1の責任領域を探索し、ECDであることを明らかにした。また、Beclin 1 ECDはAKT/PKBによってリン酸化されることが知られているが、リン酸化されるECD内のアミノ酸残基を別のアミノ酸に置換したベクターを一過性に発現させた細胞、あるいはAKT inhibitorで処理した細胞においては、本菌の侵入が抑制された。最後に、AKTを活性化させる因子としてILK1、PDKに着目し、それぞれを欠損させた細胞を作成し、GASの細胞侵入能を試験したところ、ILK1欠損細胞において顕著な細胞侵入能の低下を観察した。よって、GASはインテグリンへの結合を介してILK1を活性化し、これがAKTの活性化、最後にBeclin1の活性化を介してGASの細胞侵入を制御していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Beclin 1によるA群レンサ球菌の細胞侵入制御メカニズムについて重要な知見を得られたと考えており、研究2年目としては概ね順調であると言える。また、本年度はILK1によってAKTが活性化されることが、続くBeclin 1の活性化にも必要であることを明らかにできたことも進捗状況としては概ね順調であると考えられる理由である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は上皮細胞を用いて行ってきたが、このメカニズムが貪食細胞でも適用されるのかを試験していく。特に貪食細胞では活性酸素種が活性化するとAKT/Beclin 1-PI3Kの活性が抑制されることが報告されていることから、ROS産生とBeclin 1活性化に着目して研究を進めていく。
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