本研究は腸管病原性大腸菌 (Enteropathogenic E. coli) の感染による宿主エクソソーム分泌増大のメカニズムとその生理的意義を明らかにすることを目的とする。今年度は以下二つについて研究を進んだ。
1. 炎症刺激を受けた細胞はよくエクソソームを分泌するの報告とEPECの感染は炎症反応を惹起する事から、感染時に活性化される炎症系路とエクソソーム分泌の関係を調べた。そのうち NLRP3 inflammasome は T3SS 依存的に活性化するため、inflammasome の活性とエクソソーム分泌の関係を調べた。結果、Inflammasome 経路の中心的分子の NLRP3 を阻害しても、感染細胞からのエクソソーム量の現象は認められなかった。さらに、NLRP3 inflammasome の関連分子を調べたのち、Caspase-4の活性化を阻害することで、エクソソーム量が減少した結果を得られた。 2. 感染細胞由来のエクソソームの機能とeffectorを調べた。感染細胞由来のエクソソームを未感染細胞に投与し、腸管出血性大腸菌 (EHEC)で感染を行い、付着/感染する病原菌の数を算出した。結果、mock-処理グループと比べて、エクソソーム投与組はEHEC の感染量が増加した。このことから、エクソソーム内に菌がよく付着・感染する分子が含まれていることを示唆する。さらに内包する effector を調べた結果、エクソソームの分画に Tir effectorの検出ができた。
(意義) 通常、EPECは直接感染した細胞しか影響を及ぼさないとされている。しかし、本研究を介して、EPEC は感染細胞をのエクソソーム輸送経路を利用し、effector をさらに伝播させていること、そして、他細胞で働くことをを見出した。これは、EPEC/EHEC 病原菌感染のメカニズムにおいて、新しい見解であります。今後、EPEC/EHEC 感染時に、細胞のエクソソーム産生と分泌を抑制することで、感染の広がりを抑える可能があると考えられる。治療のターゲット候補と期待できる。
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