研究課題
先行研究では、コリンメチオニン欠乏食を用いたB. vulgatusとB. doreiを経口投与したBacteroides群では、脂肪化の改善効果が認められた。しかしながらコリンメチオニン欠乏食では体重増多なく脂肪肝がみられ、通常の肥満を伴った脂肪肝とは病態が異なるため、コリン減量メチオニン欠乏食、脂質を増やした60%高脂肪食を用いてBacteroides菌群の効果を検討した。コリン減量メチオニン欠乏食では、脂肪肝と体重に一定の関連が得られず中止した。高脂肪食にBacteroides菌群を投与した群では、組織学的に脂肪肝が抑えられる傾向はあったものの有意差は得られなかった。短鎖脂肪酸の受容体であるGPR43 KOマウスを用いて60%高脂肪食による体重変化、脂肪肝の評価を行った検討では、高脂肪食投与群では酢酸、プロピオン酸、酪酸の増加が確認されたが、GPR43 KO群でも体重、脂肪肝の程度に変化は見られなかった。Bacteroides菌群を投与して腸内細菌叢の変化について検討したが、Wild typeとGPR43 KOマウスでは有意差は見られず、高脂肪食の投与下でも有意な違いは認められなかった。短鎖脂肪酸を増やす目的でレジスタントスターチを含む高脂肪食を用いた。その結果、レジスタントスターチを含む高脂肪食を投与した群では、通常の高脂肪食投与群に比べて有意に体重の抑制効果が認められ、脂肪肝についても改善が認められた。腸内細菌叢の解析においても、BifidobacteriumやLactobacillusといった短鎖脂肪酸を作り出す菌群の割合の増加が確認された。このように得られた知見からは、脂肪肝の改善には短鎖脂肪酸が重要な役割をもち、レジスタントスターチのように短鎖脂肪酸を増やすことで、腸内細菌叢の変化がもたらされ、高脂肪食による脂肪肝の発生が抑制されたことが示された。
すべて 2021
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J Cancer Res Clin Oncol.
巻: 147 ページ: 1747-1756
10.1007/s00432-020-03448-8.