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2019 年度 実施状況報告書

病原真菌カンジダにおける多剤耐性機序の解明とその克服

研究課題

研究課題/領域番号 19K07540
研究機関長崎大学

研究代表者

宮崎 泰可  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (60448496)

研究分担者 槇村 浩一  帝京大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00266347)
田中 大  東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (00613449)
中山 浩伸  鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (40369989)
水田 賢志  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (50717618)
田中 義正  長崎大学, 先端創薬イノベーションセンター, 教授 (90280700)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード抗真菌薬耐性
研究実績の概要

本研究は病原真菌Candida glabrataにおける多剤耐性機序の解明と新たな抗真菌薬の開発を目指した新規化合物の探索を目的としている。以前、研究代表者は、C. glabrataのわずか一つの遺伝子の一つのアミノ酸変異によって多剤耐性が誘導されることを見出した。その後、DNAマイクロアレイを用いた網羅的解析とリアルタイムPCRによる検証を行い、ある細胞内シグナル伝達経路の転写調節因子が活性化されることによって、薬剤排出ポンプ遺伝子の高発現をきたしていることが明らかとなった。その結果、実際に細胞内薬剤濃度が著明に減少していることをフローサイトメトリー解析で確認した。さらに、これらの関連遺伝子欠損株を作製し、感受性が回復することを確認できたため、薬剤排出ポンプの活性化が一つの機序として関与していると結論付けた。また、免疫沈降法などを活用し、多剤耐性機序に関与している上流の細胞内シグナル伝達経路を同定した。
一方、創薬研究では、東京大学創薬機構の化合物ライブラリーを用いて, 主要な病原性真菌であるCandida albicansとAspergillus fumigatusの標準株に対して抗真菌活性を示す化合物をスクリーニングした。10 μMで50%以上の増殖阻害効果を示した化合物をヒット化合物とし、さらに濃度活性や広域性を評価した。ヒット化合物の中から新たに周辺化合物の合成展開を行い、濃度活性, 広域性, 細胞毒性を評価したところ、今回新たに合成した新規化合物1-[(E)-[4-(3',4'-dichlorobenxyloxy)phenyl methylidene]amino]-guanidineが最も抗真菌活性と広域性に優れていた。今後、多剤耐性菌に対する効果なども評価していく必要がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

C. glabrataにおける多剤耐性機序の解明は、軸となるメカニズムとそれに関連する細胞内シグナル伝達経路が明らかになってきた。現在、in vivo治療実験を行っている。創薬研究では、新規の抗真菌薬候補化合物として、1-[(E)-[4-(3',4'-dichlorobenxyloxy)phenyl methylidene]amino]-guanidineを同定できた。詳細な増殖阻害活性、殺真菌活性、抗バイオフィルム活性、細胞毒性を評価した。構造変換により細胞毒性の軽減を試みたが、抗真菌活性を示すと考えられるaminoguanidine基を保持したまま、細胞毒性の軽減は困難であった。そのため、今回は特許申請を行わず、この抗真菌活性を有する新規化合物構造を論文にまとめ、国際誌にアクセプトされた(ChemistrySelect, in press)。

今後の研究の推進方策

今後も研究計画書の記載通りに研究を遂行していく予定である。C. glabrataにおける多剤耐性機序の解明については、より詳細な検討を行い、再現性の確認とin vivo治療実験を同時に進めていく。また、本年度内に論文執筆も開始する。

次年度使用額が生じた理由

当該年度は、比較的安価で入手できる化合物ライブラリーの使用を優先したことや動物実験を次年度にまわしたことが理由として挙げられる。また、次年度は本格的にC. aurisの研究も進めるため、経費が必要になることを考慮した。使用計画としては、C. glabrataとC. aurisの実験に必要な試薬・消耗品、感染実験用マウス、学会出張および研究打ち合わせ用の旅費、論文作成費用などに充てる予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Design and Synthesis of a Class of Compounds That Inhibit the Growth of Fungi Which Cause Invasive Infections2020

    • 著者名/発表者名
      Nana Nakada-Motokawa, Taiga Miyazaki, Satoshi Mizuta, Yoshimasa Tanaka, Tatsuro Hirayama, Takahiro Takazono, Tomomi Saijo, Kazuko Yamamoto, Yoshifumi Imamura, Koichi Izumikawa, Katsunori Yanagihara, Koichi Makimura, Kohsuke Takeda, Shigeru Kohno, and Hiroshi Mukae
    • 雑誌名

      ChemistrySelect

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1002/slct.201904380

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] エルゴステロール合成酵素阻害薬2019

    • 著者名/発表者名
      宮崎泰可
    • 学会等名
      第67回日本化学療法学会総会
  • [学会発表] 化合物ライブラリーを用いた抗真菌薬のハイスループットスクリーニング2019

    • 著者名/発表者名
      中田奈々、宮崎泰可、高園貴弘、島村真太郎、西條知見、山本和子、今村圭文、泉川公一、柳原克紀、槇村浩一、河野茂、迎寛
    • 学会等名
      第67回日本化学療法学会総会
  • [学会発表] 病原真菌Candida glabrataにおけるカルシニューリン 関連分子Elm1の機能解析2019

    • 著者名/発表者名
      伊藤裕也、宮崎泰可、中山浩伸、田中大、高園貴弘、西條知見、島村真太郎、山本和子、今村圭文、泉川公一、柳原克紀、河野茂、迎寛
    • 学会等名
      真菌症フォーラム2019学術集会
  • [学会発表] 深在性真菌症の治療 - 基礎研究からのトランスレーション -2019

    • 著者名/発表者名
      宮崎泰可
    • 学会等名
      真菌症フォーラム2019学術集会
  • [学会発表] カンジダ属および多剤耐性菌に対するカスポファンギンの新たな抗微生物活性2019

    • 著者名/発表者名
      住吉誠、宮崎泰可、水田賢志、田中義正、石川岳志、槇村浩一、高園貴弘、西條知見、山本和子、今村圭文、泉川公一、柳原克紀、河野茂、迎寛
    • 学会等名
      第63回医真菌学会総会

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公開日: 2021-01-27  

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